「燕三条 工場の祭典」実行委員会と株式会社いせん(新潟県湯沢町)が「観光庁長官表彰」受賞
国土交通省観光庁では毎年、観光の振興と発展に貢献し、その業績が顕著な個人や団体へ「観光庁長官表彰」を実施しており、その第13回となる今年は北陸信越運輸局管内から、「燕三条 工場の祭典」実行委員会と、株式会社いせん(新潟県湯沢町)の井口智裕代表取締役が受賞。14日に表彰伝達式を実施した。
「観光庁長官表彰」は観光庁が発足した2008年以来つづけられており、今年は全国で9つの団体・個人が受賞したが、その中でも新潟県からは2つの取り組みが選出される結果となった。
今回県内で受賞したのは、金属加工業が集積する燕市と三条市で、ものづくりの現場を見学・体験できるイベントを続けてきた「燕三条 工場の祭典」実行委員会と、文化価値の高い古民家を改修した宿泊施設「ryugon」を軸とした地域の活性化や、周辺自治体とも連携して新たな観光の価値を創造する「雪国観光圏」などに取り組んできたいせんの井口代表。
今回の表彰伝達式は、新型コロナウイルス感染対策の観点から観光庁と北陸信越運輸局(新潟市中央区)をオンラインで繋いで開催した。観光庁の和田浩一長官との懇談の中で「燕三条 工場の祭典」実行委員会の山田立実行委員長は「町工場を出てやろうとすると、どうしても作り物のような雰囲気が出てしまう。お客様には現場に足を運んでもらい、毎日やってる仕事を間近で見てもらうことで、ものづくりの環境や、携わる人々を感じてもらえると思う」とものづくりのリアルを提供する重要性を話す。
また、いせんの井口代表も「単に温泉に入って、ご馳走を食べて、お土産を買って……という『非日常』ではなく、(旅行者にとって)自分たちとは違う暮らし、そしてそこで息づく人たちの姿を見る『異日常』へトレンドがシフトする中で、雪国観光圏も工場の祭典も評価されたと考えている」と語り、「そうした意味では、『観光村』ではない、生活そのものに厚みのある新潟は今後のポテンシャルがある」と期待を示した。
和田長官は懇談の中で、国内需要の新たな掘り起こしとして「最近は都会で生まれた人々が地方に関わろうとする動きも出ている。コロナ禍で職場や家庭が流動する中で『第2のふるさと』をつくって、そこへ何度も赴くような旅を推奨してみたいと考えている」と話した。こうした旅行の潮流や、地方移住の加速化の中では、観光客へのサービスに傾倒しすぎない、リアルな生活感と特徴を残す地域は、正に井口代表が語るように新たな強みを獲得するだろう。
県内の観光地域が連携を模索する中で、実際に連携がすでに始まっている2者が今回同時に選ばれたことは象徴的だ。今後の展開と発展に、さらに注目していきたい。