連載 第8回 新潟出身の起業家たち Motti&BentonFoodConsulting株式会社 代表取締役 坂口もとこ氏
飲食店や調理家電・機器メーカーのメニューを開発
魅力的な料理を生み出すには、一流の調理人の存在や、最高の食材は必要だ。だが、それだけでは、人々を満足させる魅力的な料理は生まれないだろう。メニュー、演出といった要素も欠かせない。そうしたものを飲食店や食品関連メーカーなどに提供しているのが、Motti&BentonFoodConsulting株式会社(モッチ&ベントンフードコンサルティング、東京都杉並区)だ。
代表取締役・坂口もとこ氏は、メニュー・フードプランナーとして、「飲食店や調理家電・機器メーカーのメニュー開発」「旅館や飲食店のフードコンサルティング」などの事業に取り組んでいる。
例えば飲食店向けメニュー開発の事業。店の人気を大きく左右するものの一つにメニューの良し悪しがあるが、同社では、看板メニューからサイドメニューまで総合的な商品企画開発をサポートしている。「業態や客層に合わせた魅力ある(ヒットにつながる)メニュー開発を進めていきます」(坂口氏)と語る。
サポートする店の業態は、大衆的な居酒屋から瀟洒な店まで様々。またチェーン店もあれば、個人経営の店舗もあるし、開業時からメニュー開発をサポートすることもあれば、既存店のメニューのブラッシュアップを行うこともあるそうだ。
開発を進めるにあたっては、まずクライアント(店など)の要望を聞き、ターゲットが求める味を、立地と適切なタイミングと価格、ブームやトレンドにあわせた見栄え、プロモーション、シーン演出、サービススタイルも含めた売上に結びつくメニューを開発する。
これまでの実績の一部が同社のホームページに掲載されている。その中で目を引いたのが、キャラクターコンテンツメニュー。このうち、アクションゲーム「星のカーヴィー」をテーマにした「カーヴィカフェ」(東京・福岡)のメニューには、SNS映えするようなものがずらりと並んでいる。例えば、カービィはトマトが好物であり、摂ると体力を全回復させる事ができるが、そうしたシーン(大口を開けてトマトを摂っているシーン)などをメニューの中で再現している。
またカービィがのんびりと波間にただようシーンをイメージしたノンアルコールカクテルもついつい見入ってしまう出来栄えだ(写真はカーヴィカフェのホームページに掲載されている)。
調理家電・機器メーカーのメニュー開発事業では、その機器を使ってつくることができるレシピなどを考案し、販売促進をサポートしている。
例えば、累計45万台を販売した家庭用のかき氷器「とろ雪」。氷をふわふわに削ることができることが特徴のかき氷器だが、製品の箱に同封されているレシピには、シナモンミルクティー氷、マンゴー氷、チョコレート氷、いちごミルク氷、チーズケーキ氷、塩レモン氷など様々なかき氷のつくり方が載っている。これらのレシピを考案したのも坂口氏だ。このほか、パナソニックのオーブントースターのレシピなども手掛けた。
そして旅館や飲食店のフードコンサルティング事業。旅館やホテルでは季節感の演出の需要や様々なイベントが行われているが、そうしたイベントのメニューを考案している。「周年記念のメニューや、夏休みの子供向けのメニューなどを様々なメニューを開発しています」(同)。
ビュッフェの演出なども手掛けており、時代のニーズに合った食材、地場産品などを使ったメニューを考案したり、ボリューム感を出すための演出などを行ったりしている。取材の訪れた日も前日まで福島県の「ホテル華の湯」(写真)で仕事をしていたという。
坂口氏は新潟市の出身。約7年間、全日本空輸株式会社(以下ANA)の国際線キャビンアテンダントとして勤務した。その後、製パンや料理のスクールで学び、料理教室を主宰するとともに、レシピの製作にかかわるようになっていった。
そして、「(メニュー・フードプランナーの仕事を)社会に価値を与える仕事として確立したい」(同)と一念発起、2016年に、Motti&BentonFoodConsultingを設立した。「レシピの仕事をしている人で、その仕事だけで食べている人はまだごく僅かですが、これから、同じ道を歩む仲間が増え、チームとして共に働ける日が来ることを願っています」(同)。