全国で2,214件発生した「新型コロナ関連倒産」、その定義と新潟県内の状況は?
新型コロナウイルス感染症により飲食業や宿泊業、旅行関連業界へ深刻な影響が出ていることはもはや言うまでもない。弊社の倒産関連の記事でも、「新型コロナ関連倒産」という文言が現れるようになって久しい。しかしそもそも、「新型コロナ関連倒産」とは何だろうか。そして、改めて県内ではどのような業種に多かったのか。株式会社東京商工リサーチ新潟支店の鵜澤一平支店長に話を聞いた。
企業が倒産した際、弁護士は破産申し立てをするに伴い、倒産の要因を申立人にヒアリングする。東京商工リサーチでは、破産企業の担当弁護士へ事情を聞いて、新型コロナによる売上減少などの裏付けがとれたものを「新型コロナ関連倒産」としているという。
同社の調査によると、10月8日現在の日本全国の新型コロナ関連倒産は2,214件。そのうち「飲食業」が383件で最も多く、「宿泊業」や、これらに関連する「食品卸売業」も倒産数の上位となっている。一方で、一見意外に見えるのが「建設業」の208件で、これは「飲食業」に次いで2番目の数字だ。
鵜澤支店長はこれについて「建設業の弱点は、やはり自社で受注のタイミングを計ることができない点。新型コロナの影響によって、工事の見直しや延長が決まったことで苦境に立たされた企業が多い。今後、官公庁の土木事業などは安定しているが、民間工事の下請けの建設業者は厳しい状況が続くと思われる」と話す。
県内に目を向けると、新型コロナ関連倒産は10月時点で計24件。業態別の倒産状況を全国のそれと比較すると、「飲食業」の倒産は6件で少ない印象だ。
しかしこれは、あくまで企業の倒産の統計であり、個人で営業している「小さな居酒屋」のような店舗の廃業・休業はカウントされていない点に注意が必要だ。「県内の飲食店の傾向として、カウントしにくい『営業してるのか、していないのか分からない店』が多い。見えないところの影響は非常に大きい」(鵜澤支店長)。
一方で、国や県などの補助によって新型コロナ以外の要因も含め、倒産自体は抑制されている。東京商工リサーチのまとめた「2020年の新潟県の企業倒産件数」を見ると、件数自体は2019年より少なく、月別の集計でも統計開始以来最少や、それに近い数の月が目立つ。その中での倒産となると元々の財務体質の弱さが否めない。
感染の長期化に伴う息切れや支援の打ち切り、さらに再拡大への懸念など、今後は倒産がさらに増える見通しだ。そんな中で「『特徴に欠ける店舗』は危ない」と鵜澤支店長は話す。
「既存の顧客やリピーターがいる店は回るし、富裕層などある程度の層を狙っている店舗も、元の客足は遠のいても逆に新しい顧客は生まれてくる。感染症へ万全な体制を敷ける店はワクチン接種による来店の制限などが可能だが、そうでない店舗は厳しいだろう」。また、各種支援の情報収集と、それを使い切ることも事業継続にとって重要だ。
そして鵜澤支店長は、今後の企業の事業展開についてこう語る。「これからは小資本でやっていくことが重要だと考えている。変化の激しい時代なので、大きな投資を投入すると、回収が見込めなくなる部分も出てくる。小資本であり、かつSNSの活用など、社会の変化に対応したビジネスを展開することが大切で、小さい会社でも十分に業績を上げることができる」。
新型コロナ以外にも、人口減少によるビジネスモデルの転換や、社会・環境貢献への注目度の高まりなど、事業展開に課題は多い。そんな中、社会の変化に対応できる柔軟性を確保することは重要だ。
(文・鈴木琢真)