八海醸造株式会社(新潟県南魚沼市)が麹甘酒による便通改善効果は麹菌によるものであると解明
八海醸造株式会社(新潟県南魚沼市)は29日、麹甘酒の飲用による便通改善効果が、「麹甘酒に含まれる麹菌体、つまり『麹菌』そのものによってもたらされることを、ヒト臨床試験により明らかにした」と発表した。
八海醸造では、これまでも麹甘酒に含まれる成分の分析や、過剰摂取・長期摂取試験での安全性の評価、抗疲労や便通改善効果などの機能性の評価を進めてきた。特に、便通改善については、明らかな効果を既に報告していたが、その時点では関与成分の同定には至っていなかったという。
今回実施したヒト臨床試験において、その解析を進め同定に至った。今回の研究は、便通頻度が1週間に2から5日の健常成人を22人ずつ無作為に2群に分け、同社製品「麹だけでつくったあまさけ」と「プラセボ飲料」を、それぞれどちらを飲用しているか分からない状態で毎日3週間飲み続けさせた。
麹甘酒とプラセボ飲料の大きな違いは、麹の成分や麹菌が含まれているかいないかとなる。その後、どちらも飲用しない観察期間を2週間設けた「無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験」を実施。
その結果、図2に示すように飲用期間中の1週目から3週目から、観察期間中の4週目までにおいて、プラセボ飲料と比較して麹甘酒を飲用したグループで、0週を基準として1週間あたりの排便日数および排便回数が優位に改善したことが判明した。
また、これまで多くの研究で便通改善と腸内細菌叢との関係が報告されているため、同研究では腸内細菌叢の経時的な変化も追跡。その結果、図3に示すように、麹甘酒を飲用したグループではプラセボを飲用したグループと比較し、飲用3週間後においてブラウティア属(ブラウティア属はグラム陽性菌で、一般的にヒト腸内細菌叢に存在している菌)が減少し、バクテロイデス属(バクテロイデス属はグラム陰性菌で、オリゴ糖を資化する能力が報告されている)が増加した。
八海醸造は、このような麹甘酒飲用時の菌叢の変化が便通改善に寄与したと考えている。さらに、どのような要因がこうした菌叢変化をもたらすのかを考察するため、同社はほかの食品による便通改善に関する報告と、これまでの同社の研究成果から、麹甘酒に含まれるオリゴ糖、グルコシルセラミド、麹菌という3つの候補成分に絞り込んで検討を重ねた。
その結果、プラセボ飲料には含まれず、麹甘酒のみに含まれている麹菌そのものが、便通改善の機能性関与成分であると結論づけた。なお、今回の研究に使用された「麹だけでつくったあまさけ」には118グラムあたり約300ミリグラムの麹菌が含まれている。
この内容は9月21日にオープンアクセス学術誌「Journal of Fungi」の麹菌特集号“Aspergillus oryzae and related Koji molds”に、論文「Intake of Koji Amazake Improves Defecation Frequency in Health Adults(麹甘酒の飲用は健常成人の便通を改善させる)J.Fungi 2021,7,782」として掲載された。これは、麹甘酒の健康機能と関与成分との関係を示した初めての論文となる。
また、この内容について今月開かれた第73回生物工学会大会でも口頭で発表した。