短期連載 新潟の逸品 その5 直売所にある意外な逸品
とんとん市場松崎店 「揚げ物、焼き魚」
「とんとん市場」は新発田市の「せいだ」が運営する人気の直売所だ。同社はもともと肥料商として明治期にスタートし、その後は米穀の集荷・販売、農業資材の販売などを手がけていた。平成10(1998)年、農産物直売所「とんとん市場 新発田店」がオープン。これが1号店で、現在は松崎店(新潟市東区)、白根店(同市南区)で直売所を展開している。
平成13(2011)年、農家と共存共栄を図る姿勢が評価され、「とんとん市場」は全国直売所研究会が主催する「直売所甲子園2011 決勝大会」で、準優勝に相当する優秀賞を獲得した。こうした折り紙付きの直売所だけに、農家からの信頼も厚く、野菜や果物など、取り扱う商品に間違いはないという。「とんとん市場 松崎店」は郊外型の飲食店や量販店が並ぶ商業集積地の一画にある。まさに人気店で、9時から19時の営業時間で客足が絶えることがない。
たいていどこの直売所でも豆腐など、農産物の加工品や総菜を扱っている。「とんとん市場 松崎店」で評判なのが、意外なことに揚げ物と焼き魚だという。スーパーなどでも、店舗内で調理する総菜や揚げ物類の良し悪しが店の評価に直結する。「とんとん市場 松崎店」のフライやコロッケなどは、スーパー以上の味と評判が上々だ。
焼き魚は調理済みのパック入りもあるが、事前にオーダーするか、店内で買い物の際に注文可能。銀ダラや銀ザケの切り身でも、アユやカレイなど尾頭付きの1本物でも焼き立てを持ち帰ることができる。
かつてまちなかに肉屋や魚屋があった時代、その場でコロッケを揚げてもらったり、魚を焼いてもらったりしたもの。「とんとん市場 松崎店」では、とりわけ手間暇がかかる焼き魚をオーダーする年配客が多いようだ。
うららこすど農産物直売所 「こすど華豆」など
「うららこすど農産物直売所」は旧小須戸町(新潟市秋葉区)の「花とみどりのシンボルゾーン」内にある。小須戸は日本一のボケ産地。このシンボゾーンには貴重品種と新花などが植えられた広大なボケ公園がある。
この地域で近年力を入れているのが枝豆の栽培だ。この分野では新潟市の「黒埼茶豆」があまりにも有名。ブランド枝豆の「黒埼茶豆」は、平成29(2017)年、風土や伝統が育んだ特色ある地域産品を保護する「地理的表示(GI)保護制度」に登録された。
新潟市秋葉区では、これまで地元の新津さつき農協が地元産の枝豆を、さつき茶豆「あまみちゃん」と「かおりちゃん」として販売していた。3年前、「うららこすど」では地元産の枝豆についてネーミングを募集。そこで「こすど華豆」と決定した。この「こすど華豆」だが、一定の基準をクリア―したものだけに与えられる名称で、「味には絶対の自信がある」という。確かに枝豆通が言うコクや甘みがある。「黒埼茶豆」や、長岡野菜に指定され、同地で栽培される「肴豆」などに勝るとも劣らない。「こすど華豆」は「うららこすど農産物直売所」で買うことができる。
この直売所には農産物の加工施設が併設されている。直売所や通販で人気なのが、この加工施設で手作りされたジャム類。中でも特産のボケの実を使った「ボケジャム」は、「うららこすど」ならではのオリジナルだ。
このほか地元産の枝豆を使ったスープも注目。調理済みで解凍するだけで食べることもできるが、生クリームを加えるなど、ひと手間かけると、さらに美味しく仕上げることができて、各種の料理にも応用が可能だという。
そら野テラス 「アロニア」
新潟市西蒲区にある「そら野テラス」は、直売所というより農家レストランやマルシェ、イチゴ狩りを楽しめる農園などを含む総合的な農業体験ゾーンだ。同区内でも旧西川町の、まさに田んぼの真ん中にある。グランドオープンしたのは3年前の5月だった。運営しているのはワイエスアグリプラント(藤田一雄社長)で、その前身はYS生産組合。ワイもエスも地元の集落名(汰上:よりあげ、鱸:すずき)にちなんだもの。「そら野テラス」の前身は、直売所と握りたてのおにぎりやお惣菜などを提供する「おにぎり館」を併設した「越後西川あぐりの里」だった。
新潟市は水田面積が国内トップ。米菓や包装餅など食品関連企業が集中している同市が農業特区に指定されたのは平成26(2014)年のこと。特区による規制緩和を利用し、農業用地でもレストランを開設できるようになった。「そら野テラス」はその際に同市内で新しく誕生した農家レストランの一つだ。
「そら野テラス」は農園のカフェ厨房 「TONERIKO」や、手作りの総菜やおにぎり、農園でできた果実入りソフトクリームなどを扱う「そら野デリカ」などで構成され、今や人気のスポットになっている。直売所の「そら野マルシェ」には、旬の地元野菜や果物が豊富に揃っているが、これら以外にも見落としてしまいがちな逸品がある。それが写真のアロニアだ。
アロニアはバラ科のブラックチョークベリーで、ポリフェノールの含有量がブルーベリーの約3倍というスーパーフードだとか。最近は県内でも栽培が盛んになっていて、ジュースやジャムに加工された状態で販売されていることが多い。写真は新潟市江南区の「みなもとFACTORY」が製造したもの。こうした意外な商品が発見できるのも直売所の楽しみだ。
※biz Link2019年10月10日号より転載