新潟県三条市の廃工場を舞台に「燕三条 工場の祭典」の展覧会が開催
新潟県三条市内の廃工場を舞台に5日から、金属加工業の一大集積地・燕三条地域の魅力を発信する展覧会「Tsubame-Sanjo Factory Museum」が始まった。例年同時期にオープンファクトリーを開催してきた「燕三条 工場の祭典」実行委員会によるイベントで、山田立実行委員長は「私たちの9年間の活動の集大成と言えるイベント」だと語る。
「工場の祭典」は2013年から始まり、今年で9回目。これまで燕・三条両市の工場を一般に解放することで、製品へ注ぎ込まれる職人の技術と想いを、国外も含めた地域の内外へ発信してきた。
新型コロナウイルス感染症禍となった2020年にも、オンライン配信という形で活動を続行。2021年は、前年から始めたオンライン配信や映像による紹介も継続しつつ「展覧会」という形での開催となった。
山田実行委員長は開会挨拶の中で「我々はこれまで、燕三条でお客様をお迎えするだけではなく、世界中で展示会も行ってきた。今回は、その凱旋のような形になる。私たちの9年間の活動の集大成と言ってもいい」と、今回の展示に自信を示す。
そして「地元や新潟の方々に見てもらいたいが、特に、未来の担い手となりうる子どもたちに来てもらいたい。ぜひこの展覧会で何かを感じとってもらって、将来この土地でものづくりに関わってもらえたら」と話す。現時点で、新潟県内の学校から700人近い児童・生徒が観覧に来るほか、展示に関わる側でも三条市立大学や長岡造形大学などの学生が案内役として参加するなど、教育や産業の継承といった面にも注目したい。
三条市の滝沢亮市長は「『オープンファクトリー』という言葉をこれほど有名にしたのは、この『工場の祭典』と言っても過言ではない。最近では修学旅行先としてもものづくり産業が選ばれ、人気コンテンツになっている。(地元の)子どもたちに燕三条の底力を目と肌で体験してもらい、将来に繋げていきたい」と挨拶の中で語る。
燕市の鈴木力市長も「昨年から新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、従来とは異なる形での開催になっているが、むしろ、どのような環境の中でもこの地域を発信しよう、という姿勢に対して感銘を受ける。この燕三条は、幾多の経済環境の苦境を新しい取り組みで乗り越え存続してきた歴史がある。『工場の祭典』も正に、その姿勢を受け継いでいる」と話した。
展覧会は、移転により廃工場となった旧・野水機械製作所が会場となっている。かつては同地域でも使用された研磨機を製造していた実際の工場を舞台とすることで、来場者にものづくりの現場の空気を感じてもらうことが狙いだ。また、展示物はかつて工場で使用されていた入れ物を使い、動線も工場に元から書かれていたものに沿っている。
その会場内には、「洋食器」や「刃物」など、燕三条で作られる様々な製品が35の項目別に展示。技術と製品の歴史を表す系統樹や、目視以上に職人の技へ肉薄した映像などを用いてものづくりの様子を伝える。
今回展示会の中で唯一実演を行う、ミノル製作所株式会社(新潟県燕市)のヘラ絞り職人・渡邉清文さんは「見られていると緊張するので、作ることに集中するようにしている」とはにかみつつ「完成品だけ見るとプレスで作られたように見えるが、実はこのような技術で作られているので、携わる職人の苦労もぜひ知ってほしい」と話す。そして、「多くの子どもたちが見学に来ると聞いている。ヘラ絞りを見て『やってみたい』と思ってもらえれば」と意気込んだ。
一方、その実演の様子を見ていた新潟市の女性は「ヘラ絞りという技術は初めて知った。職人の方々は、私たちには分からないほどの厚さまで正確に作っていることに驚く」という。展覧会に関しても「この催しは全国や海外などでも開催されたと聞いたが、同じ新潟県民としても誇らしく思う」と話していた。
【関連リンク(会期や予約状況の詳細が記載)】
燕三条 工場の祭典 公式webサイト
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