世界農業遺産に新潟県佐渡市が認定されてから10年を迎えたことを記念し記念フォーラムが開催【(株)佐渡テレビジョン(2021年10月29・30日)】
持続可能な農業や環境保全に取り組む地域を評価する世界農業遺産いわゆるGIAHSに佐渡市が認定されてから10年を迎えたことを記念し29日から3日間にわたって記念フォーラムが開催されました。
佐渡はトキと共生する佐渡の里山として2011年6月に世界農業遺産に認定されました。
「トキと暮らす郷認証制度」による生き物を育む農法を島全体に広げたことや生物多様性保全型農業が経済と連携し持続可能な環境と農業の保全に繋がっていることなどが評価されました。
フォーラムの初日29日は佐渡を拠点として活動する鼓童のパフォーマンスで始まりました。
開会式で渡辺竜五佐渡市長は「様々な方からの支援があってジアスに認定され10周年を迎えることができた、農村を取り巻く環境は厳しいが、これから新たな一歩を踏み出せるようにしたい」と話しました。
そのあと環境省 環境事務次官である中井徳太郎さんによる「トキの野生復帰の意義とGIAHS」と題した記念講演が行われました。
講演の中で中井さんは佐渡のトキ野生復帰の歴史をたどり、生物多様性や自然環境の危機は、これからの大きな課題であり、その解決モデルとなるのが佐渡の取り組みであると話しました。
また地域資源の活用や他地域との協働を通じ自立・分散型の社会を築き、自然環境・社会・経済の問題の同時解決を図る地域循環共生圏の実現に向け全国に発信・普及してほしいと締めくくりました。
次に、行谷小学校6年生によるトキに優しい環境づくりについて事例発表がありました。
まず、佐渡にトキが生息していた頃に行谷小学校で飼育していた4羽のトキの特徴について示し、当時は農薬が多く使われていて、その中に水銀が含まれていたことからトキが死んでしまったと説明し、現在の朱鷺と暮らす郷認証制度や
えさ場づくりなどについて紹介し、今後も朱鷺について学んでいきたいとしました。
続いて、トキの餌場と生きもの育む地域の取組をテーマにトキの水辺づくり協議会 会長 板垣徹さんと、生椿の自然を守る会 代表 高野毅さんによる発表が行われました。
板垣さんは、トキの野生復帰のために行ってきたビオトープ整備は、地域づくりや生物多様性のためにもなりまた環境活動の場にもなっていると話しました。
高野さんは、過去2回行われた生椿での放鳥について紹介し、学生たちのボランティア活動や子どもたちの生き物調査について触れ、こうして興味を持ってくれているひとに手を差し伸べ協力していきたいと話しました。
2日目の30日は、はじめに公益財団法人地球環境戦略研究機関 理事長であり、世界農業遺産等専門家会議 委員長の武内和彦さんによる基調講演が行われました。
講演は「日本の持続可能な農業とは~佐渡GIAHSの農村文化から考える~」をテーマに行われました。
武内さんは、GIAHSは過去の遺産ではなく、生き続ける遺産であり未来社会に繋げていくためのものだと話しました。
2050脱炭素社会の実現のため、今ある技術をどう組み立てていくか考え、社会の在り方やライフスタイルを変えていく必要があるのではないかとし、そのためには持続可能な未来を担う若者の役割が重要なのではないかと呼びかけました。
またSDGS達成のための国連の最新動向にも触れ、GIAHS認定地域間の連携や交流が新たな農村文化を生み出すのではないかとしました。
その後、佐渡と共にGIAHSに認定された能登地域のある石川県珠洲市の泉谷満寿裕市長など7名が参加したパネルディスカッションは「佐渡から考える持続可能な農業とは」をテーマに行われました。
パネルディスカッションでは現在の取組を、これからどのように継承していくか付加価値をつける必要があるとしパネリストそれぞれが行っている事業などの紹介がありました。
そのうえでGIAHS認定地域同士の交流や連携で新しい知識を取り入れることや、
働き方や生活の多様性を尊重することで循環型社会を実現していきたいとしました。
また「佐渡における持続可能な農業とは」などをテーマに掲げた分科会や、
若者が住み続けたいと思う農村の未来のために学生が考えたアイデアを発表する里山未来ユースサミットも行われました。
最後は地元芸能プログラムとして、能や民謡、鬼太鼓が披露されました。
また会場では佐渡の環境に対する取組や他の認定地域についての展示も行われていました。
31日にはトキのモニターツアーなど現地での体験型見学会も行われました。