連載 第9回 新潟出身の起業家たち スマートソーシャル株式会社 代表取締役 酒井禎雄氏
人材の派遣、WEBやアプリの受託開発、マーケティングをワンストップで提供
スマートソーシャル(東京都)は、エンジニアの派遣、WEBやアプリの受託開発、WEBマーケティングをワンストップで提供している。「当社は従業員数14人の小さな会社です。しかし、誰もが社名を知っている大手”の顧客と直取でつながっていて、受託開発だけでなく、売れるイメージまで提案しています」。代表取締役の酒井禎雄氏はこう語る(具体的な企業名は同社サイトで見ることができる)。
ある雑誌に記事の中で、誰もが知る大手企業の担当者が、同社を選んだ理由をこう述べていた。「開発、SEO対策などをやってもらいながら、エンジニアが足りなければ派遣してもらい、さらにマーティングまで相談できる会社は他になかった」。
開発あるいは営業など1部門だけにしか強みを持たない企業が圧倒的に多いなか、同社はなぜ、ワンストップで提供できるのか。それには1300社のWEB開発会社と1万2000名のエンジニアとのネットワークを抱えていることもあるが、同社の1人、または数名の社員が組んでワンストップでサービスを提供できることが大きい。
だが、そんな人材はそうそう存在するものではない。同社ではどのように人材を発掘しているのか。「人が好きな社員を採用してきました。こういう人材は狭い領域だけでやることはなく、お客様に対し、広く興味や関心を持ちます。その結果、『顧客のこの商売はどういう風に成り立っているのか』と考えていくのです」(酒井氏)。
みらい創造機構と連携したファクトブックの製作事業
酒井氏は、1968年に三条市で生まれた。長岡高専を卒業後、“起業家輩出機関”として知られるリクルートに入社し国の通信の自由化を受けて立ち上げた通信事業に従事。その後、学生募集の事業に携わった。
同事業はリクルートの創業2番目の事業で、「リクルート進学ブック」は、学校の優れた部分(ファクト)に光をあてることで、学生募集につながっていった。この手法はリクルート内部で確立され、学生募集だけではなく創業事業の採用事業では零細企業だったある服飾メーカーの浮き彫りになっていなかった優れたところを世に伝えて大企業に成長することを手伝ったことがあったり、新潟県内のメーカーが優良企業になることを手伝ったケースもあるようだ。
そして今、酒井氏は、自身のリクルートでの経験を活かして、ファクトブック(企業や団体がメディアに対して自社や製品・サービスを理解してもらうための基礎資料)の製作事業に取り組み始めた。いわば、 灯台下暗しで会社自身が気づかない優れたファクトを企業に代わりに見つけ、PRする感じだ。
具体的には、(顧客である某大手企業からの紹介で知り合った)株式会社みらい創造機構(東京都千代田区)との連携で行なう。みらい創造機構は、技術を事業価値に変えることを強みとし、主に東京工業大学関連技術ベンチャーを対象とした「ベンチャーキャピタル事業」(2017年に東工大関連ベンチャーキャピタルファンドを組成)、事業価値を新たに開発する「新規事業開発コンサルティング事業」、事業価値をメディア発信する「PR支援事業」などを手掛ける。
PR支援事業では、ベンチャーや中小企業の”隠れた強み・価値”にスポットライトを当て、消費者、関係企業、学生やメディアなどに興味を持っていただくためのファクトブックを製作する取り組みを行っている。
例えば農作物を運ぶ運送会社が、「多くの農家を管理して新鮮な状態で早く確実に店舗に納品できる」というファクトをPRすれば、小売り関連企業が興味を持つだろう。また、「(大手企業の)寿司店が全店で使っているネタを積み上げると何メートルある」といったファクトをPRすれば、在京の大手メディアが関心を示す可能性がある。
酒井氏は、この事業を地方の企業にも利用してほしいという。「新潟の企業の皆さんにも利用して頂きたい。必ず隠れた部分を世に広くPRしていくことができると考えています」(同)。
人気テレビ番組などに取り上げられるなど、広くファクトをPRができれば、これまでと違う次元に企業がいける可能性もあるといえる。
なおファクトブックの製作はこんな企業に向いているという。
・技術やサービスに自信があるが認知されていない。
・営業に力が避けず、新規顧客が取れない。
・ブランド力が弱く、人が採用できない。もしくは採用しても定着率が低い。
※biz Link2019年10月10日号より転載