人口減少社会を視野に冷凍加工技術を高度化した「ナチュレ片山」
規格外で廃棄していた果物の活用が可能
新しい商業施設、ナチュレ片山(新潟市東区卸新町3)が先月9日にオープンした。延べ床面積約3000平方メートルの2階建て。世界最大級となるハイブリッド型のログハウス構造物だ。この建物は平成27年度の国交省サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)に採択された。
ナチュレ片山は酒類の量販店を展開していた片山商事(新潟市東区、片山政博社長)による新しいタイプの商業施設。施設の東棟1階は「食と健康」をコンセプトとする食品や酒類の売り場。2階が住環境商品の販売スペースで、デンマークやフィンランドのブランド家具類などが並んでいる。そのストアコンセプトは「快適・睡眠環境と健康」だ。
施設の西棟1階は主に食品加工工場として利用され、特別な冷凍保存食品の製造工場となるという。2階は加工場でできた食品などを提供するレストランとなる見込み。
東棟の食品や酒類の売り場には、安心、安全をコンセプトに、全国から選び抜かれた商品が並ぶ。オープン以来、ナチュレ片山には各種メディアが殺到し、今も注目を集め続けている。
こうした商品もさることながら、それ以上に期待が集まるのが西棟1階の食品加工工場。そのコアとなるのが、ハイスペックの冷凍加工技術だという。例えば果物だが、冷凍することでむしろ食味が増す。一般的に果物は消費者に届くまでの時期を想定し、熟す前に収穫する。そのため完熟した果物本来の味は消費者に伝わっていない。
これを完熟時期に収穫して冷凍し、解凍して提供することで、完熟した果物本来の味を楽しむことができる。果物を冷凍することが一般化すれば、生産者にとってもメリットが発生する。
例えば規格外などの理由から廃棄していた果物も活用が可能になる。冷凍したものをスライスすることで、新しい食材として利用することが可能になるからだ。こうした冷凍果物のスライスは高齢者向けの食材など、多方面への応用が想定されている。
果物の冷凍だけではない。例えば野菜や納豆、海藻といった健康的な食品を冷凍し、これを解凍するだけで食べることができようにした高齢者向けの商品も開発可能。さらに海外で無農薬栽培された果物を冷凍で輸入すれば、安くて美味しく、かつ安全だ。
冷凍は商品の流通でも強みを発揮する。生での配送が危険な食品も、冷凍なら安心だ。少子高齢化で人口はさらに減少する。食品スーパーは過剰になるし、大量消費の時代は終わり、消費者は少量の安心、安全な商品を選択する時代だ。こうした消費者へ確実に安心、安全、かつ美味しい商品を届ける。冷凍加工への注力から、ナチュレ片山の新たな戦略の一端がうかがえる。