新潟県が原子力災害時の避難経路の渋滞などをシミュレーション、改善策には新規スマートICの整備や分散避難の実施
新潟県防災局原子力安全対策課は19日に記者会見を開き、原子力災害時における、渋滞発生の可能性の把握や、より円滑な避難を検討するため、避難時の交通状況の趣味レーションを実施した。新潟県ではこの調査結果を受けて、新規スマートICの道路整備に要する経費について国が財政措置をとるよう要望するなどの対応をしていくという。
今回の調査では、市町村の避難計画に示されている避難経路を利用して、通常の交通状況のほか、地震や津波による被害、積雪、長岡花火といった大規模イベントによる観光客の増加など避難が難航する状況も想定したシミュレーションを実施した。
今回のシミュレーションでは、原子力施設から半径約5キロメートル圏内(PAZ)の住民とPAZの外側約半径30キロメートル(UPZ)の自主避難者が一斉に避難を開始することにより、柏崎市内と長岡市内の計4ヶ所の交差点を起点とする渋滞が発生する結果となった。
こうした結果から県原子力安全対策課は、北陸自動車道への車両流入を促すための新規スマートICや刈羽PA(下り)緊急開口部の利用などの対策案を示す。対策なしの場合のPAZ避難者の30キロメートル離脱時間は、13時間40分だったが、対策案を反映し、北陸自動車道と国道8号の交差部へ新規スマートIC(柏崎刈羽スマートICと仮称)を整備した場合は、9時間程度に短縮した。また、柏崎刈羽スマートICの整備は積雪時や観光客の増加時にも同様の渋滞回避効果が見られたという。
また、UPZの避難においては各避難方面でのスクリーニングポイントで汚染検査を受けることになるが、住民の一斉避難によって、スクリーニングポイントを起点に長区間の渋滞が発生する。
この対策のため、UPZの避難開始時期を複数日に分散させる。対策案を反映したシミュレーションでは、避難開始時期を4日間に分散した場合、UPA避難者の個人平均移動時間(30キロメートル離脱)は対策前の22時間50分から7時間10分に改善、対象地域全体の30キロメートル離脱時間は、対策前の130時間20分から100時間40分に短縮された。
こうした調査結果を受けて県では、新規スマートICなど住民避難を円滑に実施するための道路整備に要する経費についての財政措置や、屋内退避の重要性の周知を国に要望していくほか、分散避難の実施やスクリーニングポイント候補地の追加の検討、混乱を避けるための原子力防災訓練の繰り返しの実施といった災害時の対応力向上を図っていくという。