新潟プレシジョン(十日町市)が、土方歳三の日本刀「和泉守兼定」をレプリカとして再現
1000分の1ミリメートル単位の高い精度で再現
土方歳三といえば、幕末の江戸を駆け抜けた新選組の“鬼の副長”、局長・近藤勇を支えた右腕として知られている。端正な顔立ちや男気などから、男女を問わず多くの現代人にも人気だ。そんな土方が愛用したのが、日本刀「和泉守兼定(いずみのかみかねさだ)」。博物館などでも展示されているこの刀を、精密機械部品などを手掛ける株式会社新潟プレシジョン(新潟県十日町市)が、レプリカとして再現した。精密機械部品は工作機械を駆使して、1000分の1ミリメートル単位の高い精度でつくられている。限定50本で発売が始まり、すでに数本が売れたという。その技術力は日本のモノづくりだけでなく、幕末に思いをはせる歴史好きや「刀剣女子」のロマンをもときめかせている。
和泉守兼定は、現在の福島県に当たる会津の鍛冶職人である兼定が京都で作ったものとされている。土方はこれを携えて幕末の混乱期を潜り抜け、北海道・函館の地で銃弾に倒れた。和泉守兼定は土方の死後、紆余曲折を経て土方の家族にわたり、現在も土方の命日である5月11日ころには、土方歳三資料館(東京都日野市)で期間限定公開。多くのファンを魅了し続けている。
この和泉守兼定のレプリカは、本物の兼定の7分の1ほどの大きさで、全長は146ミリメートル。刀身、刀を持つ柄、刀を収める鞘のすべてを再現した。鞘には花の「牡丹」と鳥の「鳳凰」をあしらうこだわりよう。牡丹も鳳凰も数ミリメートルの大きさで、鞘に彫られている。ここからも高い技術力がうかがえる。
完成度の高いレプリカを作れるのは、同社が精密部品作りで培ってきた技術力があるからだ。金属を切ったり削ったりする旋盤やフライス盤、マシニングセンターなどの機械や、金属を研ぎながら削る研削盤、細かく切り分けるワイヤーカット加工機などを駆使して、機械部品などを、同社は作っている。1000分の1ミリメートルを追い求めるその技術力は取引先からも評判が高い。
戦国武将が愛用した刀のレプリカ作成にも着手
そもそもレプリカを作ったのも「モノづくりの楽しさを、何かの形で広く伝えたい」という星輝彦社長の思いがあったから。そこに、取引のある機械メーカーから「高い加工技術を一目でお客さんに知ってもらえるサンプルを作ってほしい」という依頼が来た。星社長にとっては渡りに船だった。数年ほど前、星社長は試しに小さな日本刀を作って、展示会の自社ブースに飾り、来場者から注目を集めた。「もっと作りこめば、もっと注目されるのではないか」。そう考え、レプリカづくりを決めた。
和泉守兼定はレプリカとしては2代目。初代は地元越後の生まれで米沢藩の初代藩主だった上杉景勝が愛用した「高瀬長光」を再現した。取引のあるメーカーが出展した展示会にサンプル出展すると、国内外の来場者から好評で、そのメーカーから追加注文が入ったという。「これはいける!」星社長は直感し、和泉守兼定も作成した。「和泉守兼定は、博物館でも展示されているように資料がかなり残っている。ならば、完全再現を目指してレプリカをつくろうと思った」。
和泉守兼定は新潟プレシジョンのホームページなどで注文することができる。税抜き価格は1本18万円だ。さらに、現在は戦国武将が愛用した刀のレプリカ作成にも着手している。来年2月ごろから順次完成予定で、同社が出展する展示会でも飾るという。作成中の写真も順次、同社ホームページで公開予定。思わぬところから人気を集め始めた同社の精密日本刀レプリカ、新たな事業の柱にすえ、不確実性を増している現代を切り開き、事業成長に向けて駆け抜けていく考えだ。