旅人がつくった、旅人と地域が交わるゲストハウス「トライアングル」(新潟県燕市)
金属加工をはじめとする製造業が盛んな燕三条地域に、夜な夜な旅人が集まる場所がある。今年4月23日にオープンした同地域初のバー併設ゲストハウス「トライアングル」は同地を訪れた人に旅の土産話や地域と交流する空間を提供している。
オーナーの沼田基氏は神奈川県出身で、2014年から3年9カ月かけて世界46カ国を巡った。2018年4月に帰国後、旅人が交流する場所をつくりたいと考え、ゲストハウス事業を計画していた。沼田氏が同地を選んだのはめぐり合わせ。関東で物件を探していたところ、旅先のフィリピンで友人となった男性から自身の住んでいる燕三条地域を紹介された。沼田氏が同地に到着するやいなや、男性から地元の工場を次々と案内された。
さらに男性は地元企業経営者を紹介。そこから話はすぐに広がり様々な企業経営者や自治体職員らとつながりができた。「見ず知らずの自分に対してここまでしてもらえるとは驚いた」と、地元の人柄に惹かれた。JR燕駅から徒歩圏にある商店街の古民家を買い取り、自治体や金融機関の支援を受けて、沼田氏が帰国したちょうど1年後となる2019年4月にオープンした。
運営スタッフも5人中3人が世界一周経験者など全員旅人で、沼田氏が世界旅行中にスカウトした。たとえば、キューバで出会ったプロカメラマンの大岡翔さんとは、ボリビアとフランスで再会。縁あって共にアフリカを縦断している間にゲストハウス運営に勧誘し続けたというエピソードがある。
他者との交流を重視するゲストハウスでは通常、交流スペースを備えているが、トライアングルではバーがその役割を果たす。沼田氏らスタッフの土産話や地元の話題を肴にお酒が入り、気付けば知らない人と卓を囲んでいることは日常茶飯事だという。また、要望があればスタッフが地域外から訪れたゲストに対して地域の魅力を伝えるのも重要な役割としている。「同地は見るものが沢山あるが、情報が出ていないなど観光地としては少し難易度が高い部分がある」。
企業、名物、観光地などの情報発信も
常設のオープンファクトリーを行う諏訪田製作所(三条市)をはじめ、情報発信に力を入れる企業を紹介するなど同地の名物や観光先を提案し、地域の魅力を伝えている。「外国の方には近くの食堂に入るのも貴重な経験で喜ばれる。こうやって街をコンテンツにするのが、ゲストハウスの役割だと思う」。案内はほとんどの場合無料。観光のリピーターが増えれば、ゲストハウスのお客も増えるという考えからだ。
バーで一番注文が多いテキーラ(ショット)をはじめ、ほとんどアルコールは1杯500円。「ゲストハウスとバーの複合経営によってギリギリ成り立つ値段設定」だという。それでも安価でサービスを提供する理由は地元の人が通える店づくりを優先するため。「情報が回る場所にしたい。地元の人からは地域ネタをもらい、集めた情報をゲストに提供しこの街の魅力に触れてほしい」と、トライアングルは地域の情報が循環するハブを目指している。
宿泊は1泊2000円。男女兼用ドミトリー(相部屋、10人)と女性専用ドミトリー(同4人)がある。シャワールームや長期滞在者向けにランドリーも備えている。
【酒呑みゲストハウス「トライアングル」】
住所/新潟県燕市宮町3-6
フェイスブック/https://www.facebook.com/GuestHouseTriangle/
※biz Link2019年11月10日号より転載