パレスオートセンター(新潟市中央区)の、在庫を持たない中古車販売への挑戦
展示車を売るだけでは実現できない、顧客の要望
中古車販売なのに、サービス業。新潟市中央区のパレスオートセンターを一言で表現すると、こうなるだろう。
新潟駅南を出て、まっすぐ伸びる道路を進み、ドン・キホーテが見えたら左に曲がって少し進んだところに、パレスオートセンターはある。しかしそこには、普通の中古車販売会社に当たり前にあるような、フロントガラスに価格が書かれた車は展示されていない。なぜならパレスオートセンターは、在庫を持たない中古車販売会社だからだ。
このパレスオートセンターを運営するのは、1961年創業の旭自動車株式会社である。現在の場所で「パレスオートセンター」として中古車販売業を開始したのは1966年というから、新潟市の中古車販売店としては老舗だ。3代目代表である鍋谷タツロー氏も、「祖父は、当時の時代を考えれば、ずいぶんハイカラな名前をつけたものですね」と笑う。
その鍋谷氏に、なぜ「在庫を持たない」という、普通の中古車販売店とはかなり異なるスタイルを取っているのかを伺った。中古車に限らず車を買う人のほとんどは、店舗に展示されている現車の見た目を確認し、座ってみて乗ってみた感じを確認するくらいのことはしてから、購入を決めるのではないだろうか。
ところがパレスオートセンターでは、顧客に現車を見せることなく、まず買いたい中古車についての要望を詳細に聞いてから、それに合った車を仕入れて販売する。顧客側からすると、「こういう中古車が欲しい」というのを伝えた上で、後になって中古車を見せられてから、購入するのだ。
しかしそうだとすると、「後になって見せられた中古車がイメージと違って、買うのをやめてしまう人もいるのではないか」という疑問も湧く。もちろん鍋谷氏も、それが0%ではないし、販売するときはいつも「不安に思うこと」だそうである。では実際のところ、顧客の要望を受けてから仕入れた中古車が、その顧客への販売に至るケースは何パーセントくらいなのか。
なんと、98.7パーセント。ほぼ100%である。
もちろんパレスオートセンターはこの販売方式を、最初から行っていたわけではない。3年前に始めたというから、比較的最近だ。鍋谷氏曰く、「展示車を売るスタイルだとどうしても在庫を販売したいあまり、売りの姿勢が強くなってしまう」。車を販売する者としては、顧客が本当に欲しい車を販売したいのに、それは限りある展示車を勧めるだけではなかなか実現できない。そこに強い葛藤があり、現在の販売方式に変更したとのことだ。
「顧客の要望に合った車を仕入れて、販売する」形の、もう一つのメリット
この、「顧客の要望に合った車を仕入れて、販売する」方式には、意外なメリットもあるようだ。顧客が顧客を紹介してくれるケースが、目に見えて増えたそうである。
展示車を販売する中古車販売の場合、それは顧客目線から見ると、「まず展示車ありき」だ。その店に欲しい車があれば買うし、無ければ買わない。またたとえ買ったとしても、家族・友人、知人が欲しい車が、同じ店にあるとは限らない。これだと、紹介はなかなか生まれない。
しかしパレスオートセンターでは、欲しい車を伝えることで、ピッタリの車を全国131のオークション会場から探し出してくれるのである。「行って相談すれば、とにかく欲しい車が手に入る」形だから、顧客側からすると紹介もしやすい。
そう考えるといいことづくめの販売方式であるが、そうはいってもやはり、「販売員の顧客の要望を聞くスキル」や「要望通りの車を探し出すためのシステム作り」には、大きな苦労があったようだ。顧客の要望をきちんと聞いておかず、売れなかった車を抱えてしまっては商売が成り立たない。したがって高度な人的スキルやシステムは、どうしても必要である。
他の中古車販売会社で、パレスオートセンターのようなメリットも大きい販売スタイルを行わないのは、やはりリスクや難しさを考えて二の足を踏むからだそうだ。しかし鍋谷氏は、「始めてから3年が経ち、今では自信が持てる形になってきました」と話してくれた。
新潟市でも最近、大型の中古車販売会社の出店が相次いだ。ところがパレスオートセンターにとって、それは競合相手ではない。パレスオートセンターで販売しているのは車というより、中古車についての顧客の要望をきちんと引出し、きちんと叶えてあげるサービスだからである。
【旭自動車株式会社 概要】
設立/昭和36年12月
資本金/1600万円
代表者/鍋谷達郎
住所/〒950-0912 新潟県新潟市中央区南笹口1丁目8-1
パレスオートセンターWebサイト/https://www.kuruma-palace.com/