人の感性を計測・数値化して売れる商品づくりを支援するトフィー(長岡市)
株式会社TOFFEE(トフィー、長岡市)は、長岡技術科学大学技術科学イノベーション専攻の中川匡弘教授が2016年に設立した大学発のベンチャー。脳波などを計測することで人の感性を数値化し、企業の商品開発を支援している。
例えば、書くことで脳が活性化し集中力が高まる紙を使用しているアピカのノート『集中力UPドリル』。長岡技術科学大学、トフィー、王子ホールディングス株式会社は共同で、20代の被験者75人を対象に、紙の色やざらつき具合が異なる紙を使って、記憶力、論理力、計算力に関する筆記試験を実施、筆記時の脳波を測定・解析した。その結果、凹凸のある青色の紙に書くことで、手や目から感じた刺激が脳に伝達され、集中力が高まることが明らかになったという。このノートには、研究結果をもとに王子エフテックス株式会社が開発した、その「あたまを鍛える紙」を採用している。
また、髪を洗った後のすっきり感を従来製品より長く感じることのできる香りの清涼剤を採用した「トニックシャンプー」(サンスター)も共同開発から生まれた。このほか、「ガムをかむと記憶力が高まるのか」「紅茶を飲むと、ときめきを感じさせる効果があるのか」ということを測定し、商品開発に活かしたケースもある。
これまで、「売れる商品」づくりは、ベテラン開発者などの感覚に頼ってきた側面がある。こうしたなか、トフィーでは、脳波測定という客観的データに基づいて、企業と商品開発を進めており、これまでに30件以上に上るという(トフィー設立前の大学と企業の共同研究も含む)。
県内企業とも様々な共同開発
県内企業でも共同開発の事例がある。株式会社ブルボンは新商品の販売に際し、ライバル商品と比べ、「そのお菓子を見たときに食べたいと思うか」「食べた時に再び」を測定した。またヨネックス株式会社は、ボールを打った時のラケットの手ごたえを測定し、心地よい打球感を感じる素材を使ったラケットを商品化した。
日本精機株式会社もドライバーの検知状態を測定したことがあるという。例えば、一方通行の看板を見たときに「単に図形としてみているだけなのか」あるいは「侵入したらダメと感じているのか」といったことを測定した。
さらに株式会社日比野音療研究所(新潟市)の帆船型の音響装置『凛舟(RINSHU)』でも共同研究を行っている。
この製品は、再生装置、アンプ、帆&船体(=スピーカー)で構成。加茂の桐などを使い、加茂の桐箪笥職人の手により制作されているという。
凜舟では、無意識下の脳波を測定する共同実験を行ったという。それによると、凛舟が従来型ハイレゾ対応スピーカーと比較して「平安」「心地よさ」などの感性を35%向上させ、「不安」「恐れ」などの感性を55%減少させる結果となったという。
今後の県内企業との共同研究について中川氏は、「新潟県内の酒蔵と共同研究を行ったことはないが、ぜひ行って、客観的に売れる日本酒をつくってみたい」と語る。
一方、計測は、被験者が10人いれば大丈夫という。「怒りやすい人も、穏やかな人も、怒った時を1として本人の中で相対評価をする」(中川氏)ためだ。このため例えば、怒りについて調査する場合、怒りやすい人が10人集まった時も、穏やか人が10人集まった時も同じ結果になるのだ。
なおこ計測システムは外販をしており、国内の大手自動車メーカーでは自社で活用しているという。
※biz Link2019年11月10日号より転載