中小企業に迫られる環境配慮 第4回 マルタスギヨ株式会社(新潟市北区)が導入した太陽光発電の「PPAモデル」
これまで3回にわたり株式会社テクノナガイ(新潟市北区)に、環境配慮をめぐる世界の潮流と、エネルギーの未来にかける同社と長井裕三代表取締役の想いについて話を聞いてきた。
今回は、実際にテクノナガイが太陽光発電導入に携わった、マルタスギヨ株式会社(新潟市北区)へインタビューし、企業が太陽光発電導入に際してもっとも注目するであろう経費削減の効果などを見ていきたい。
設置と維持管理を無償で実現する「PPAモデル」
「数の子わさび」や水産珍味などを展開するマルタスギヨでは以前より、排出する二酸化炭素を原油換算で毎年1%ずつ削減することを目標とした環境配慮の取り組みを進めている。特に、阿賀野工場の照明600台あまりのLEDへの入れ替えや、工場内の空調や冷凍機を高効率のものにするなど、省エネルギーの取り組みに積極的だ。
取り組みの一環としてマルタスギヨでは、2年ほど前から太陽光発電の導入の検討を始めた。しかし一方で、ネックになったのは初期投資だ。
「自社で太陽光発電設備を購入するとなると、やはり初期投資で何千万円もかかる。また、故障、あるいは(耐用年数を超え)廃棄の際のことなどを考えた場合、あまり良いイメージがなく、(社内は)なかなか導入に乗り気ではない雰囲気だった」とマルタスギヨ生産本部購買担当の増井雅樹課長は話す。
そこで注目したのが、近年太陽光発電普及の起爆剤として注目される「PPAモデル(第三者所有型モデル)」だ。
これは、施設所有者が建物の屋根などのスペースを提供し、PPA事業者が太陽光パネルの設置や保守管理を無償で実施するもの。発電した電気は「再エネ賦課金」がかからないこともあり、PPA事業者が施設所有者へ対して安く販売するケースが多い。
「自分たちで設置した方が発電のメリットを一番大きく受けられるのは当然だが、PPAモデルの場合は、設置と契約期間の点検をPPA事業者が行うため、費用がかからない。それでいて、これまでの電力会社から買うよりも電気代を抑えられるのであれば『ちょっとこれを取り組んでいこう』ということで(太陽光発電の導入を)進めるきっかけにできた」(増井課長)
太陽光発電の経済的メリット
では実際に、どれほどの費用削減効果があったのか。
マルタスギヨが同社阿賀野センターで太陽光発電設備の運用を開始したのが、今年の5月。発電量が多かった7月には、同センターで使用する電力の12.4%分を太陽光発電が賄っており、直近10月の値でも10.56%と10%台を維持している。
また同時に最大需要電力が減少したことにより「基本料金」が下がるという相乗効果も生まれた。これは太陽光発電で一部電気をまかなう事で、既存の電力会社からの電気の購入量が減少したことに加え、屋根に太陽光パネルを設置したことによる遮熱効果で冷暖房のそもそもの使用率が抑えられたことによる効果と考えられる。
「現在、新型コロナウイルスで内食や宅飲み需要が増え、弊社では稼働率が上がっている。そのため、ほかの事業所では電気使用料が増加しているが、阿賀野センターではむしろ15パーセントほど減少している」と増井課長はその効果について語った。
2021年12月現在、原油価格の高騰などにより電気料金の値上げも天井が見えない。また同時に、再生エネルギー導入を促すために設定されている「再エネ賦課金」も年々上昇しており、2021年には、使用電力×3.36円/キロワットアワーとなった。テクノナガイのコラムでは、この「再エネ賦課金」は「2030年ころまでは年々上昇していく」との予想を記述している。
電気料金やガス料金の値上げによる家庭への打撃が連日ニュースを賑わせるが、企業にとっても深刻な問題だ。特に、食品加工業では冷凍・冷蔵庫などで大量の電気を使用するため、「食」に関する産業が多い新潟県内企業にとっては耳の痛い話だろう。
太陽光発電と言うと、環境配慮のような理念的な面がクローズアップされることが多い。しかし、経済や経営の観点からもエネルギー供給の安定性は不可欠だ。電力の「地産地消」を推進するPPAモデルなど自己消費型の太陽光発電へ、今後さらに注目が集まっていくことは間違いない。
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