泉田裕彦元知事が「泉田県政下で資金手当債が最大限発行された」に反論
財政難に陥っている新潟県では今年10月、行財政改革の基本方針と対策をとりまとめた「新潟県行財政改革行動計画」を策定した。こうしたなか、新潟県が、県財政に関して、「泉田県政下で(国の交付税措置のない)資金手当債(行政改革推進債、退職金手当などの総称)を最大限発行した」などと述べたという。これに対し、新潟5区選出の衆議院議員で、元新潟県知事の泉田裕彦氏は12日記者会見を開き、県当局が事実に反する広報を行ったとして反論を語った。
記者会見の中で、泉田氏は、新潟県財政課長が、「泉田県政下で資金手当債を最大限発行した」と説明したことに対し、「そもそも資金調達債という規定や定義はないし、発行を指示したこともない。このため発行額も特定できない」などと反論した。
一方、泉田氏の知事在任中(2004年から2016年)には、初当選の就任直後に中越大震災が発生したことなどもあり、就任後、「防災・減災対策に注力」(泉田氏)し、防災効果を上げてきた。また、大都市と地方の格差是正を掲げ、様々な政策も進めてきた。反面、防災・減災対策や核再是正という知事の基本方針を受けた形で、(泉田氏が資金手当債などについて具体的に指示していなくても)“資金手当債”の発行が増加していったという見方もある。
こうした結果、泉田氏在任中、中越地震などの復興資金需要などもあったものの、資金手当債の発行額は増加している(表参照。なお、交付税措置額を除いた「公債費の実負担額」は、2003年度以降、資金手当債が最大限発行されてきたことや、2008年度以降に償還スケジュールを20年から30年に見直した影響などにより、2019年度以降、2028年度までの10年間で約200億円の増加が見込まれているという)。
これに対し、泉田氏は甘い見通しで発行したわけでないことを強調。「(資金手当債は)将来の支出削減効果額の範囲内でしか発行できない。将来の県財政や県民への負担増になる場合は発行できないし、将来経済が拡大するからという予想をもとにも発行できない。(そうしたなか、)泉田県政では、1000人単位の人員削減などで3000億円超の県負担引き下げを行った。その一部を(県債発行で)県民に還元したに過ぎない。また、花角知事には(支出の軽減という)ボーナスを残した」などと語った。さらに続け、「(泉田氏が甘い見通しで発行し続けてきたと誤解されないよう)地方債の制度(甘い見通しで発行できない制度)を正しく広報してほしい」と述べていた。
なお、支出削減に取り組んだ泉田県政下では、目減りしていた基金(県の貯金)の残高が回復したほか、実質的な県債残高が県政史上初めて減少に転じた。
経済成長への見通しはどうだった?
10月25日の知事会見でも語られたように、「(泉田県政下では)経済成長というものを非常に積極的に捉えて見通しを立てていた」などという指摘もあるようだ。これに対し、泉田氏は「将来の経済成長を前提に発行できる県債はない」などと語っていた。
ただ、泉田知事の時代の財政運営計画で、「資金手当債を最大限活用」する方針が打ち出されていたという(泉田知事が把握しているかどうかは別として)。また、過去の県議会議事録を見ると、泉田氏は、「GDPの内需項目は3項目しかありません。1つは個人消費、1つは民間投資、この2つが、今、弱くなっています。もう一つは政府投資、政府最終消費支出です。3つの項目しかないわけですから、前の2つが動かなければ、財政政策を通じて購買力を実体経済に投入するしか政策手段がないということになっています」と何度も語っている。
こうしたことから、(先述のとおり)積極的に財政を出動し、防災・減災対策などを進めてきた結果、資金手当債の発行額が増加したという見方がある。
ただ、県債は平成24年度に、協議制度を一部見直し、一定基準を満たす地方公共団体については、事前に届け出ることで起債ができる事前届出制が導入されたが、泉田氏によると、届出制になった後も、国との協議はあったという。このため、当時は県も国も甘い見通しを持っている中で、県債が発行され続けてきたといえるかもしれない。
なお、この日の会見では、財政問題についての質問に対して、会見の趣旨と異なるという理由で泉田氏からの回答はなかった。
反論はファクスで花角知事に
泉田氏は9日付で、反論の記された申し入れ文書をファクスし、秘書課長を通じて花角知事に渡したが、秘書課長を通じて聞いた知事の回答は「特段申し上げることはない」というものだったという。