新潟大学医歯学総合病院で2件の医療事故が発生
新潟大学医歯学総合病院は24日、同院で医療事故が2件あったと発表した。2018年と2019年に診察した事例で、それぞれ病変や異常があったにも関わらず、今年まで検査・治療を行わなかった事故が発生した。
1件目は、消化管内視鏡で病変があったにも関わらず、約3年間、患者に対して詳しい検査や治療が行われていなかった事故。患者は新潟県在住の70歳代の男性で、胆嚢や膵臓精査の一環として、2018年9月に超音波内視鏡検査を実施。その際、同時に行った上部内視鏡検査で偶然に食道に病変を認めたため、内視鏡的に同病変を切除する方針とした。
しかし、担当医は、胆嚢や膵臓の病変のみ対応し、食道の病変に対する治療や検査を行わなかった。今年8月に担当医が交代し、新たに担当した医師が、過去にさかのぼって検査結果
を確認していたところ、約3年前の内視鏡で食道の病変が存在していたことが明らかとなった。担当医はすみやかに内視鏡検査を行い、3年前よりも病気が進展していることが明らかになり、結果として約3年間、詳しい検査や治療が行われていなかったことになる。
同院では、速やかに医療安全管理委員会を開催し、調査を行った結果、同時期に多くの検査が行われたため、担当医が食道病変への対応を失念してしまったこと、この不備に関して他医師が気づけなかったことが課題として挙げられたという。従来は内視鏡所見の見落としがないように、所見を依頼医が確認したかを電子カルテ上でチェックする仕組みで対応してきた。現在は、今回の事案を受け、重要な内視鏡所見に対し、実際に追加検査や治療が行われたかを確認し、行われていなければ依頼医に督促する仕組みを構築するなどの再発防止に取り組んでいる。
患者と家族には、事故の発覚後すみやかに事実経緯を伝え謝罪したという。患者は現在も同院で治療を継続している。
一方、2件目は、CTで肺に異常陰影があったにも関わらず、約2年間、患者に対して詳しい検査や治療が行われていなかった事故。患者は、新潟県在住の50歳代の男性で、2019年10月に他医療機関からの依頼で、同院で冠動脈CTを撮影した。その際撮影したCTで、偶然、肺に小さな異常陰影がみられたため、依頼元の医療機関に2か月後にCTの再撮影を勧める返書を送った。これとは別に、依頼元の医療機関から心疾患の精査・治療のために、別途、新潟大学医歯学総合病院を紹介された。外来で診察した担当医が冠動脈CTの報告書を確認し、CTの再撮影を計画しましたが、その後に担当した医師にこの計画が伝わらなかった。
今年6月になって、患者は背中の痛みを訴え、他医療機関でCTを撮影したところ、肺に腫瘍が見つかり、精査・治療のために新潟大学医歯学総合病院を紹介された。その際に診察した医師が過去にさかのぼって検査結果を調べたところ、約2年前の冠動脈CTで異常陰影が存在していたことが明らかとなったもの。結果として、肺がんも疑われるCT所見に対して約2年間、詳しい検査や治療が行われていなかったことになり、この間に病気が進展した。
速やかに同院内に医療事故調査委員会を立ち上げて、調査を行った結果、医師間の情報伝達や情報収集に不備があったことが判明したため、さらなる改善に取り組んでいくという。これまでも予期しない重要な画像診断所見に対しては、依頼医がその所見を確認したかを電子カルテ上でチェックする仕組みで対応してきたが、今回の医療事故調査委員会の結果を受け、重要所見に基づき実際に追加検査や治療が行われたかを検証し、行われていなければ対応を督促する仕組みを新たに構築するなどの再発防止に取り組んでいくという。
患者や家族には、事故の発覚後すみやかに事実経緯を伝え謝罪した。患者は現在も同院で治療を継続している。
新潟大学医歯学総合病院は、「このたびは、患者さま並びにご家族の皆様に大きな不安と苦痛を与えてしまい、大変申し訳なく、心よりお詫び申し上げます」とのコメントを出した。