新潟県5市1町1村にガス供給する北陸ガスが「災害対策の取組み」を紹介

北陸ガス本社(新潟市中央区東大通)

「日頃から個人で知っておくことが、すなわち災害への備えにもなり得る」3点

一般財団法人国土技術研究センターによると、全世界で起きたマグニチュード6以上の地震の20.5%は、日本で起きているそうだ。日本の国土面積は、全世界の0.28%しかないにもかかわらず。また地震以外にも、台風、大雨、雪害。日本は本当に、自然災害が多い。

いざ災害が起きたら、まず命を守る行動をとるのは鉄則だ。ところが、いざ命が助かった後には、社会生活を送る上で、深刻な事態に直面することも多い。電気、ガス、水道などの、インフラが機能しなくなった場合である。今年の台風15号では千葉県の広範囲で停電が起き、台風19号では本州の広範囲で普段の暮らしが破壊されたことは、記憶に新しい。

もちろんインフラ事業者も、災害に対して無策ではない。むしろこれまでに起きた災害から、今後もまたどこかで起きるであろう災害を見越して、積極的に対策を取っている。

今回は、災害対策の取組みについて、新潟県内5市1町1村にガスを供給する県内最大のガス事業者、北陸ガス株式会社(新潟市)を取材した。

北陸ガスでは数多くの取組みを行っており、かつそれぞれについてとても詳しく話を聞かせて頂いたのだが、その中でも「日頃から個人で知っておくことが、すなわち災害への備えにもなり得るもの」を3点ピックアップして紹介したい。

1.震度5相当以上の地震を感知すると、ガスは自動で止まる

住宅などに取り付けられているガスメーターに組み込んだマイコンが、震度5相当以上の地震を感知すると安全装置が作動し、ガスの供給がそこで遮断される。

しかしガスメーターによって止まったガスの供給なら、簡単な操作をすることでガスが使えるようになる。命も家も周囲も無事が確認出来たら、ガスメーターの復帰作業をすることで元に戻ることを、覚えておいてほしいとのことだ。
(ガスメーターによる復帰作業の手順については、こちらの動画でも紹介しています)

ただし災害の大きい地域では、二次災害防止のため、地域へのガス供給そのものを停止することがある。この場合はまず北陸ガスが、地域へのガス供給再開に全力を注ぐことになる。

ガスメーター復帰方法

2.災害時にガスの供給状況を知る方法

災害時に北陸ガスでは、ガス設備の被害状況・供給停止状況等について、テレビ、ホームページ、Twitter・FacebookのSNSを活用して、迅速に情報を発信できるよう取り組んでいる。「地震が発生した場合には、いずれかの方法で情報の確認をお願いしたい」(北陸ガス)とのことだ。

とはいえ災害時には、行政やインフラ関係のWebサイトにアクセスが集中する。するとアクセスしづらくなっていて、現在のインフラ等の状況を知りたくても知ることができない。このようなことは、度々ニュースで聞かれる。
北陸ガスではこうした事態を回避するために、まず何より必要とされるサーバーの強化を実施。その上でさらに、ヤフー株式会社と災害情報発信に関わる連携も行っている。

災害時にYahoo! JAPANで「北陸ガス」と検索すると、北陸ガスの正規サイトとは別に「キャッシュサイト」が表示されるというのが、ヤフーとの連携の中身だ。「キャッシュサイト」とは、ヤフーのサーバー上で正規サイトをコピーしたサイト。北陸ガス側からするとこの「キャッシュサイト」にもアクセスを誘導し、正規サイトへのアクセス負荷を軽減することで、サーバーのシステムダウンを防ぐ狙いがある。

キャッシュサイトイメージ(上から2番目がキャッシュサイト)

3.「エネファーム」は、災害時のインフラとして機能する(条件有)

エネファーム普及推進協議体「エネファームパートナーズ」の11月21日の発表によると、家庭用燃料電池「エネファーム」の全国累積普及台数が、30 万台を突破したとのことだ。エネファームを至極簡単にいえば、発電、給湯、暖房の3つの役割をガス(都市ガス/プロパンガス)によって果たしてくれる、発電する給湯器である。省エネ・創エネに優れているため環境にもよく、政府も2030年までに530万台(日本全世帯の約19%)の設置を目標としている。

そしてこのエネファームには、「停電時発電継続機能(レジリエンス機能)」というのが装備されている。この機能があると、エネファームが発電中に電力会社からの電気が途絶えた場合、いわば停電した場合に、エネファームの電気の流れが自動で切り替り、発電を継続する。発電した電気は、停電時専用コンセントから電気を利用することができ、照明やパソコン、テレビ、お風呂、給湯、床暖房などあわせて500Wまで使用できる(ただし、都市ガスと水道水が供給状態にあることが条件)。

エネファームはこのほか、断水時も有効に機能する。断水時に雑用水の確保が必要になった場合、エネファームの貯湯タンクに入っているお湯(水)を取り出して、使うことができるのだ(最大130L、トイレ32回分)。

北陸ガスでは、このエネファームの普及に注力している。2011年には北陸ガス管内で27台の稼働台数だったのが、2019年8月末時点で2,000台を突破した(約8年で約74倍)。

なお北陸ガスが来年4月にガス事業を譲受ける予定の見附市では、同じく来年中に「現在発売中のエネファームをお使いいただける」(北陸ガス)とのことだ。今現在は見附市で供給されているガス成分の関係で、現行のエネファームは利用できないとのこと。見附市在住、または在住予定の人は、もう少しで現行エネファームの恩恵を享受できるようになる。

繰り返しになるが以上の3点は、北陸ガスが災害対策として行っている取組みのごく一部だ。北陸ガスではその他にも、ハードからソフトに至るまでさまざまな災害対策の取組みを実施しており、かつそのどれもがガス事業者が果たすべき社会的使命として、大切にされていることもよく理解できた。

ただ災害は、必ず「想定外の事態」も引き起こす。そんな時に以上のような、「自分でもできることや備え」を知る人が一人でも多く増えれば、少しでも社会全体の混乱を小さくすることができるだろう。

【参考サイト】
北陸ガス「地震対策」/https://www.hokurikugas.co.jp/company/jishin/
北陸ガス「地震が起きたら」/https://www.hokurikugas.co.jp/personal/guide/jishin.html
北陸ガスFacebookページ/https://www.facebook.com/hokurikugas/
北陸ガスTwitter(災害時のみ)/https://twitter.com/Hokugasofficial

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