【インタビュー】今年9月に公募で社長に就任した、えちごトキめき鉄道代表取締役社長 鳥塚亮氏
「雪月花の第二弾の列車を走らせたい。チャレンジする価値はある」
観光列車「雪月花」が好調に推移している、えちごトキめき鉄道。今年9月に公募で就任した東京出身の鳥塚亮(あきら)新社長に、経営戦略と観光への取り組み、鉄道への思いなどを聞いた。
――9月に就任して数か月が経過したが、手ごたえは?
鳥塚 上越地域は鉄道に関して愛着を持っている人が多いと感じる。大阪や東京へ夜行で行った年代の人もいるし、直江津や糸魚川は鉄道の街だ。旧国鉄職員の家族もいる。その意味で「鉄道は関係ないよ」という人は少ないと感じる。昭和40年代、私が中学生の頃、夏休みに妙高市に電車で遊びに来た。山の奥に来たと思ったら、刺身が出た。旅館の人に「なんで出るんですか」と聞いたら、「すぐ日本海があるんです」と言われて驚いた記憶がある。昭和30年代生まれの人々にとって、妙高高原はスキーのメッカということもあり、憧れの場所だった。
――新潟県の鉄道発祥の地である直江津への思い入れは?
鳥塚 直江津は東と西の文化の接点。例えば、お正月に直江津は鮭だが、富山はブリ。関東は鮭で、関西はブリになる。二つの文化があり、すごいことだ。みなさん鉄道に前向きだ。例えば、電化50年を記念して、今年10月に旧北陸本線の記念切符を出して、好評だった。SLの写真を市民から募集したのだが、その写真をみなさん持っておられて沢山集まった。
――観光列車「雪月花」が好調だ。
鳥塚 普通、第3セクターの観光列車は古いものを改修してやるが、「雪月花」は新車だ。JRの「ななつ星in九州」や「TRINSUITE四季島」は何十万円もする。それに比べれば同じ新しい車両で1万7500円はリーズナブルだと思う。基本的に、新幹線接続で県外の人が多いが、地元の人も結構利用している。今年のこれまでの実績は75%という数字が出ている。ほぼ一杯だ。4人掛けで3人連れなら75%。3人なら相席は無理なので、100%にはならない。リピーターも多いし、いい傾向だと思う。
――トキ鉄をどう全国区にしていくか。観光の施策は?
鳥塚 普通の列車は目的地に行くために乗るが、観光列車はそれに乗るために来る。わざわざやってきてもらい、地域にお金を落としてもらう。それが観光列車をやる意味だと思う。高田の城や妙高の山、上杉謙信はすでに来ている人。まだ来ていない人をどう呼びこむか。ここはやはり雪。日本では冬は旅行客が少なくなるので、その穴埋めとして外国人に来てもらう。旅行客はお金を使いに来ている。今はLCC(格安航空会社)の時代。交通費は安く済ませ、行った先でお金を使うのが台湾、香港の人たちだ。ただし、「雪月花」は40人しか乗れないので、限界がある。次の列車として、第二弾を走らせたい。観光は成功するか分からないので難しい面もあるが、チャレンジする価値はある。
――経営再建については?
鳥塚 大きな苦しみの要因は設備の更新だ。電化50年で、電信柱や変電所などが更新の時期に来ている。災害などで貨物が止まったら大変なことになる。国もリスク管理として計画に織り込んでいかなければならないだろう。制度改革なのでそんなに簡単にはいかないが、国とも話し合い、資金面で支援してもらいたい。