新潟市の外国人創業促進事業を活用した第1号の中国人起業家 オール・ライト 陶晨拯代表取締役
新潟市が国家戦略特区に指定され、外国人による起業を促進するために、在留資格「経営・管理」に関する認定要件の特例が認められていることはご存じだろうか。この特例が認められている都市は新潟市と福岡市の2都市のみだ。
この制度を活用した認定第1号となる外国人起業家が2019年10月1日、いよいよ新潟市中央区の朱鷺メッセにある、にいがた産業創造機構のNICOプラザ創業準備オフィスに拠点を構えた。中国上海市出身で、オール・ライト代表取締役の陶晨拯氏(51歳)だ。
陶氏はこれまで、古河電工上海有限公司に勤務。古河電工が属する古河グループと言えば、日本の鉱山王と言われた古河市兵衛が1875年に新潟県草倉銅山(現・阿賀町)の経営に着手し、さらには1877年に足尾銅山を拠点として銅山経営に乗り出したことに端を発する企業。この古河電工に勤務した陶氏が新潟県で起業したことには不思議な縁を感じる。
陶氏は古河電工に勤務していたころ、同社の電力・通信事業に携わり、中国国内の電力公社などと深い関わりを持った。さらに、日本のパートナー企業が関わる社内ロジェクトを数多く経したことで1年のうち3分の1を日本で過ごし、業務を通じて日本語を独学で学んだという、たたき上げのビジネスマンだ。陶氏はこの長い日本生活の中で、日本人のものづくりに向き合う真摯な姿勢に触れ、この真摯さに応えられる商品を販売したいと思い立ち、日本での起業に踏み切ったという。
また、中国国内の人件費が年々上昇しており、今や日本と大きく変わらないことも日本で起業した理由の1つだ。
MAPタイプ食品パッケージの密封状態を測定するリークチェッカーを販売
オール・ライトの主力事業は、スイスに本社を置き、欧州や米国のみならず、日本、香港、韓国、台湾などに現地法人を有するグローバル企業インフィコン(日本法人の本社は神奈川県横浜市)から委託を受けた、MAPタイプ食品パッケージの密封状態を測定するリークチェッカー「Cantura S400」の販売だ。インフィコンは、この種の計測機器の分野では世界トップクラス。
世の中のリークチェックニーズを応じる、言わばニッチ市場のリーディングカンパニー。陶氏はこれまで携わった業務を通じ、この分野の豊富な知見を有していたため、短期間で委託販売の許可を得られたという。陶氏はCantura S400について、「新潟県をはじめとする北陸地域は食文化がとても豊か。この機器は、国内外に高品質な食品を届けたいと願う、この地域の皆様のニーズにきっと応えられるでしょう」と語る。
従来、MAPタイプ食品パッケージの密封状態の測定は、パッケージを直接見るか、ウォーターバスの中に入れて気泡の有無を確認するという手段でしかしていなかった。これに対し、Cantura S400は、食品パッケージを所定の場所に設置し蓋を閉じるだけの簡単な動作で極限真空度空間を作り出し、密封状態を高精度かつ短時間で測定できるという。これら測定結果は全て記録できるため、客観的なデータとして商品の精度を担保できる点も利点の1つだ。
もう1つの特長は、食品パッケージを設置する底部と、測定時に閉じる蓋の内側が柔らかい特殊な皮膜になっていることだ。これにより、測定時に食品パッケージを損壊することなく安全に検査できる。この特殊な皮膜はジーメンスの特許であり、短時間で真空条件を達成して測定を行うことが可能だ。Cantura S400は主に、食品企業の開発部門や生産ラインの2か所での活用を想定。既に、世界大手のスイス食品企業であるNestle や香港大手の食品企業である美心グループなどが導入しているという。
陶氏はCantura S400の販売のみならず、リースやこの後のメンテナンスを含めた幅広いサービスを展開予定だ。また、今後の展望について、「今回出展したフードメッセinにいがたに限らず、様々な企業商談会に出展してPRしていくつもりです。また、中国の法務・税務・マーケティング・M&Aなどについて、県内企業の皆様からご要望があれば力になります。いつでもご相談ください」と語る。
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古河機械金属の創業地・鹿瀬(現阿賀町)(2018年9月24日)
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※biz Link2019年12月10日号より転載