新潟県内の自治体や企業で導入進むロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)
(この記事はBIZ Link2019年12月10日号に掲載したものです)
新潟県内・全国ともに企業や自治体などを悩ませる課題の一つに「人材不足」がある。少子高齢化が進む現状、数の少なくなった人材をどのように活用するか各社とも頭を悩ませている。そんな中、一つの切り札として期待されているのが「RPA」だ。RPAはロボティック・プロセス・オートメーションの頭文字を集めたもので、訳せば「ロボットによる業務の自動化」となる。ただ、RPAで出てくる「ロボット」とは、何もアニメに出てくるような大きな機械構造物ではなく、パソコンなどに導入して人の代わりに作業を実施するソフトウェアのことを指す。
県内の自治体や企業にも、RPAの導入はどんどん進んでいる。最新技術の導入とそれに伴う人材の再分配で、各社はさらなる効率的な資源配分による事業加速に力を注いでいる。
長岡市 9月から本格導入
長岡市は2018年9月から2カ月間、勤怠管理など一部の業務にRPAを試験導入した。結果、導入した部署の業務時間が、合計で年間2000時間以上減らせる見込みがつき、本格導入が始まった。
同市がRPAを試験導入したのは、人事課など9課だ。勤怠管理など36の業務で使用を開始した。導入前に同担当が全市的に実施した調査で、業務効率化を進める上での課題に「勤怠管理など定型作業の処理の煩雑さ」との意見が多くあった。そこで、NTTグループが開発したRPAツール「ウィンアクター」を導入した。
導入して2カ月間、健康診断の事後処理や市民税関連など6課の25業務で自動化のめどがついた。累計で年間3214時間かかっていた作業時間も、1186時間に減らせる見込みがついた。19年1月に開いた全庁職員対象の成果報告会でも驚きの声が上がったという。めどのついた業務に加え、現在はさらに全市的に導入すべく事業を展開。RPAで市民サービスのさらなる質向上に挑む。
デンカ 工場を止めないために活用
糸魚川市にあるデンカ株式会社青海工場は現在、RPAをプラントの運転管理に活用中だ。青海工場は石灰石から、カーバイド(クロロプレンなどの原料)やセメントを作る。工場のそばには海も山もあり、雲が湧きやすく、雷雲が時折発生する。同工場は姫川水系に、水力発電所を多く持ち、青海工場と水力発電所をつなぐ送電線が張り巡らされている。そこに雷が落ちれば、電力の供給が止まり、生産がストップする恐れがある。
落雷予報が出ると、これまでは工場のスタッフが30分に1回、気象庁ホームページを確認。落雷の危険が高まれば手作業で警告音を発していた。人材を別の作業に振り分けるため、その作業にRPAを導入した。
RPAを入れて1年半、「大変効果的だと分かった。人手で実施していたときは確認漏れなどがあった。それが一切なくなった」と青海工場長を務める新村哲也常務執行役員は実感する。今後は、製造成績や経費使用実績などの集計値転記作業をRPAで自動化し、業務生産性のさらなる向上にもつなげていきたい考えだ。
BSNアイネット 導入推進に取り組むベンダー
県内を中心にITソフトウェアの導入などの事業を展開している株式会社BSNアイネット新潟市中央区)。同社でも、NTT グループが開発したウィンアクターなどRPAツールの導入に向けて、さまざまな事業を展開している。RPA導入セミナーなどを主催して啓もうを図っているが、同社の担当者によると「RPAとは何かをフェーズは終わり、現在は本格的な導入に向けてどのように動くべきかを考えるようになってきた」と認識している。
現在数多く実施しているのは「ハンズオンセミナー」、つまり「ツールのライセンスを購入してみたものの、まだしっかりと使ったことのない人向けに、『とりあえず使ってみましょう』と手を携えてあげるセミナー」だという。月に2回、主に無料でツールに触ってもらいながら操作を覚えてもらい、自社に持って帰ってツールを活用してもらうセミナーだ。
RPA普及のフェーズは、都心部で言えば大手および中堅企業の一部書類転記業務に使われるようになってきたという。ただ、新潟をはじめとする地方では「人件費の違いや事業主の雇用に対する考え方などから、普及への流れは若干鈍い」とみている。それでも、セミナーは満席だというから注目度は高い。現在、RPAのすそ野は広がりつつあるという。大事なのは「RPAは、『システム化するにはコストが高く、人へ作業負荷がかかっているところを自動化してあげる仕掛け』ということをしっかり理解すること」。今後も正しい導入に向けて動き続ける。
※biz Link2019年12月10日号より転載