【インタビュー】帯織駅の新しい施設「駅ラボ帯織」を考案した有限会社ストカ(三条市) 斎藤和也専務
「無人駅にモノづくり関連の拠点をつくり燕三条地域の魅力向上に貢献したい」
新潟県三条市のJR信越本線帯織駅に、新しい施設「駅ラボ帯織」が作られようとしている。図面を引けるソフトウェアの入ったパソコンや3Dプリンターなどをそろえ、モノづくりにおける悩み事の相談に乗ったり、製品開発を手伝ったりして、モノづくりの街「燕三条」の魅力向上などに努める。陣頭指揮を執るのは、同駅近くでプレス加工を手がける有限会社ストカの斎藤和也専務だ。整備費用を集めるために実施したクラウドファンディングでも目標金額以上の調達を達成。2020年8月のオープンに向け、施設に込める思いなどを聞いた。
――駅ラボ帯織を考案したきっかけは何ですか。
斎藤 悩みを持つ人などに気軽に立ち寄ってもらい、技術を持つ地域の企業を紹介することで、悩みを解決し、地域へもっと来てもらえる。そんな場所を作りたく、施設整備を決めた。この地域には、中小の町工場が数多くあり、注文をもらえれば、最後まで付き合える一貫生産体制が存在している。ただ、どこの会社がどんな技術を持っているか紹介できるような施設はこれまでなかった。この地域には、機械に組み込まれる部品などを作るBtoBのビジネスを展開する工場が、一般消費財を作る工場より多い。『燕三条 工場の祭典』の実行委員長を2019年に務めて感じたのが、BtoBの企業は一般消費者に売り先のある企業より、表立って自身の得意技などをアピールしにくい現実だ。その機能を駅ラボに持たせれば、地域のモノづくり振興に貢献できるとも考えた。
――駅ラボにはデザイン機能と工場機能のほか、地場の職人らと交流できる場所も設ける予定です。
斎藤 来場者と職人が交流することで、製品化に向けた思わぬ発見が生まれたり、『そういう悩みがあるなら、当社で働いて解決してみてはどうか』と人材マッチングにつながったりと、意外な化学反応が生まれる可能性があると期待している。とあるものを製品化した際、ラボ内にいる人にも製品を体験・評価をしてもらうことで、市場性検討などにも入ってもらえると考えている。現代で製品が売れる一番の要素は『他人からの評価』だと感じる。各種通販サイトなどがユーザーのレビューを大事にしているのもその姿勢の表れだ。
ただ、市場に投入してから評価を待っては、大やけどを負う危険もある。駅ラボに集まった人たちが各々製品を評価しあえる場としても、活用してもらえればうれしい。
――駅ラボ帯織が目指すものは?
斎藤 燕三条におけるモノづくりのプラットフォームとなることだ。帯織駅に作ったのも、駅は人の往来が多いところであり、地域内外から多くの人に訪れてほしいと思ったからだ。ラボで相談をした後、二次交通機関などを使って地域内の各工場を訪れてもらう回遊性にも目を向けている。クラウドファンディングでは、出資していただいた方の7割が県外在住だということもわかり、地域外からの期待が高いことがうかがえる。ラボ整備に当たり、私を始め地域10社の若手やデザイナーと協力してそれぞれの得意分野を活かしたコンテンツを用意することも決めた。ラボの運営は彼らと新会社『ドッツアンドライン』を立ち上げて担う。この社名は訳せば『点と線』。全員がつながって面でモノづくりを盛り上げるだけでなく、テン=10(10社)で始まって、人のつながりをセン=1000もしくはそれ以上にまで広げていきたいという思いも込めている。駅ラボをきっかけに全国の無人駅を活性化させて、各地域を盛り上げていきたい。
※biz Link2020年1月10日号より転載