にいがた県央マイスターの事業所訪問ツアーが開催
にいがた県央マイスターの事業所訪問ツアーが30日、新潟県三条地域振興局及びにいがた県央マイスターズクラブの主催で開催された。この日は、中村ターンテック(弥彦村大戸)、飯塚金属(燕市東太田)、野島製作所(三条市三柳)、日野浦刃物工房(三条市塚野目)を訪問。各事業所のマイスターたちは、各々の技術を披露するとともに、仕事にかける思いを語った。
中村ターンテック(弥彦村大戸)技術開発部技術顧問の林正栄氏は、自動車・家電製品メーカー等大手企業を含む約140社から依頼を受け、年間約4万種に及ぶ部品類の製造に携わるマイスターだ。林氏は特殊な製品加工において、対応する工具を自作することで低コストかつ短期間で注文に対応する実力の持ち主。ミクロの世界での製品加工にかける思いについて、林氏は「自社だけでなく地域全体の発展のため、若手技術者たちへの技術継承を含め、マイスターとして取り組んでいます」と語る。
また、中村ターンテックは取り扱う部品が小型である関係から、女性技術者が多く、全従業員74人のうち、約3割を女性が占める。実際に現場を見ると、女性技術者が卓上旋盤の前で金属加工に取り組む姿が目に留まった。
飯塚金属代表の飯塚昇氏は、燕の産業技術の礎ともいえる「キセル製作」技術を有するマイスターだ。かつて、燕地域には、多くのキセル職人が店を構えていたものの、現在は飯塚氏1人のみとなっている。キセルは、1つの板金から約30もの工程を経てようやく完成する。この工程の多さから、1日に作れるキセルは1本ほどであり、複雑な模様を施す場合、3~4日かかる場合もあるという。
飯塚氏はキセル製作にかける思いについて、「キセルの需要は減っているものの、その分、愛好家の方たちとの繋がりがとても深くなっています。そんな人たちとの賀状を通したやり取りを含め、密度の濃い付き合いができることが楽しみの1つです」と話した。
野島製作所技術顧問の相田芳佐氏は、日本国内で生産ラインのロボットの導入に初期の頃から携わり、現場の状況をメーカーにフィードバックし、更なるロボット開発にも貢献してきた、言わば産業用ロボット導入のパイオニアと言えるマイスターだ。現在は、産業ロボットインストラクターとして、大手自動車部品メーカーへの技術指揮や海外進出の支援を行っている。
国内外を問わず活躍する相田氏は、ノウハウがない状況からのスタートだった当時を振り返り、「当初は失敗ばかりで、より知識のある方に相談し、ようやく形になりました。たくさんの良い方々との出会いがあったからこそ今があります」と語る。相田氏のノウハウは現在、専門分野ごとに野島製作所の若手に着々と継承されているという。
野島製作所では、自動車のシートフレームなどを製造。この生産工程の多くを産業用ロボットが担い、人の手が加わるのは製品の検査や細かな組み立てのみだ。AIの進歩によっては、検査や組み立てさえも人の手を必要としなくなる可能性があるという。
日野浦刃物工房代表の日野浦司氏は、独学で鍛造・熱処理・鋼の知識・冶金学を学び、試行錯誤を繰り返しながら、刃物の技術・技能を究めてきたマイスターであり、欧米各国を飛び回って自身の鉈や包丁にかける思いを伝える、鍛冶職人であり伝道師ともいうべき人物だ。
この日は、包丁を製造する際の、鉄と鋼を叩いて鍛接する技法「鋼付け」を披露。日野浦氏は、自身の製品に込める思いについて、「1番大事なことは、長いこと良く切れて、研ぎやすく、欠けにくいこと。また、単に刃物を売るだけでなく、研ぎの文化も含めて国内外にしっかりと伝えていきたい」と語る。そんな日野浦刃物工房には、国内外のシェフからオーダーが入り、遠くニューヨークにも熱烈なファンがいるという。
三条地域振興局は、県央地域の産業を支える卓越した技術・技能を持つ者を「にいがた県央マイスター」として認定し、後継者育成・技術伝承・伝統ある技術力の発信等の活動を行っている。「にいがた県央マイスター」制度は平成17年度に開始され、これまで31人をマイスターとして認定している。
認定されたマイスターは、ものづくり体験教室「マイスター塾」や工業高校・テクノスクールの外部講師など技術・技能継承活動を展開するなど、地場産業振興の一翼を担っており、今後ますますの活躍が期待されている。
にいがた県央マイスター制度に関する県ホームページ/https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/sanjou_kikaku/1192465865060.html