連載 第10回 新潟出身の起業家たち 株式会社JOINT CREW代表取締役社長 村越了氏
ITで地方創生 関東以外のIT人材にも良質な仕事を
株式会社JOINT CREW(ショイントクルー)は、東京都千代田 区に本社を置くシステム開発企業だ。大手企業から受託したシステムを首都圏と関西にいるエンジニアで共同開発したり、保育園など向けに給食便りを閲覧できる機能を持つスマートフォン向けアフリを作ったりしている。根本にあるのが「地方創生に寄与できるIT導入」ということ。そう考える村越了社長は新潟県長岡市出身。地元・長岡や新潟県をはじめとして、現在日本全国の地方で進んでいる衰退を憂い、活性化への思いを込めて事業活動に取り組んでいる。
村越社長は2019年12月、全従業員を対象に「企業ビジョン」を話した。それは「日本中の子供を笑顔にする。100年後の日本の子供たちが笑って過ごせる社会を創る」というものだった。実現のために「育児環境 の課題解決」「働き方改 革へのアプローチ」「ビジネスプランの公募」の3つにより注力していく方針を掲げた。
「育児環境の課題解決」においては、スマホ向けアプリ「ランチル」を2017年にサービスをスタートしたことにより、取り組みを始めつつある。ランチルでは、兵庫県の芦屋市立保育所で園児たちに提供される給食の献立を父兄が簡単に見ることができる。献立を見ることで夕食メニューの参考にできるのだ。
「これまで紙による給食便りの配布が一般的だった」と村越社長。便りに載る情報は主に市が保有しており、国は「行政テータのオーフン化と有効活用」を提唱している。そこで学校と父兄の連絡をこれまで以上に利便性高く実施できるツールとしてランチルを世に送り出した。現在はランチルで構築したスキームを発展させ、神戸市の地域課題解決プロジェクト「アーバンイノベーション神戸」へ、参画も進めている。また「働き方改革へのアフローチ」でも、東京の大手企業から受注した案件の開発を、地方にす るエンジニアに分散委託。こちらでも、着々と取り組みを進めている。「ITは東京発の案件が技術的にも最先端だ。この状況が続けば地方のI Tは衰退が進み、頑張りたいエンジニアが地元を離れなければならない。地方に住みながら最先端のITに触れて仕事ができ、自身の成長にもつながる仕組みを我々が作ろうと考えた」。
ゆくゆくは道府県に開発拠点を設けたい
村越社長は、新潟県内で自動車整備士や営業のキャリアを得てIT企業に入社し、その後、JOINTCREWを立ち上げた。「それまでの仕事はすべて楽しかったが、ふと『俺ってどんな仕事が本当はしたかったか』と思ったときに、すべてが違うと感じた。でもITには『すべてを変える力がある』と考えていたから、ITに身を投じたいということだけは決めていた」。そんな時にふと思ったのが、地元・ 長岡への思い。「米百俵の精神もあってかITで地方を元気にしたいと思い、起業した」。
村越社長は、経営において長岡が生んだ山本五十六の「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。」という言葉を大事にしている。「ITで地方を元気にする」という思いに、従業員も最初 は半信半疑だったが、自ら芦屋市に乗り込んでランチルの仕事をまとめてきてからは従業員も「社長は本気だ」と確信したという。「やってみせの姿勢は本当に大事だと思った」。
現在は東京と大阪、神戸に拠点を置き、事業を展開中。ゆくゆくは道府県に開発拠点を設けたいと意気込む。地元・新潟には「ただ案件の受託をするだけでなく、エンジニア自ら成長できるような仕事ができる先端技術の開発拠点を作りたい」。村越社長は、SDGsの達成にも視野を向けている。
※biz Link2020年1月10日号より転載