ソフト開発会社社員、NPO法人理事長、ワーケーションコディネーターの3つの「複業」を実践する竹内義晴氏(新潟県妙高市在住)

竹内義晴氏

新潟県妙高市在住の竹内義晴氏は3つの顔を持つ。まさに今注目を浴びている「複業」を実践している人である。「複業」とは、本業のほかに仕事をするという従来の「副業」とは異なり、「複数の本業」がある働き方である。

1つ目は一般社団法人妙高市グリーン・ツーリズム推進協議会(新潟県妙高市)のワーケーションコディネーター 、2つ目は特定非営利活動法人しごとのみらい(新潟県妙高市)の理事長、そして3つ目はソフトウェア開発会社、サイボウズ株式会社(東京都)の社員である。

サイボウズが複業採用するというツイッターを偶然見て、働き始めたのが2017年。現在、竹内氏はサイボウズに週2日、フルリモートで働いている。以前はそのうちの月1回は出社していたが、コロナ禍に入ってからはリモート勤務になっている。昨年の11月に会社のイベントがあり、1年以上ぶりに出社したという。

 

関係人口の創出とワーケーションの推進

基本的に月曜日から水曜日は、妙高市グリーン・ツーリズム推進協議会のワーケーションコディネーターとして、妙高市のワーケーションの立ち上げなどを行っている。

竹内氏は「一般的にワーケーションというと、仕事と休暇を組み合わせた働き方だと言われている。だが、実際にできる人は少ないのではないかと思った。また、自然や食、温泉を売りにしても、それは今まで観光でやってきているし、単にテレワークの拠点を作っても、Wi-Fiがあるから人が来るわけではない。観光資源や箱ものではない、新たな”何か”が必要ではないか」と分析する。

現在、主に企業を対象とし、都市部では体験できない地域の体験をしてもらうことで、人材育成やチーム作りといった企業研修としてワーケーションを展開している。

「妙高市グリーン・ツーリズム推進協議会では、観光で来る交流人口と、移住で来る定住人口の間の関係人口を増やしたいと考えている。観光だと2、3回来ればだいたい飽きるし、移住はハードルが高すぎる。その間の住まなくてもいいから行ったり来たりする人を増やすのを妙高市はやりたい。そのツールとしてワーケーションを展開している」(竹内氏)。

ただし、ワーケーションをやるからと言って、すぐに人が来るわけではない。企業とのつながりが必要であり、企業にしっかりと価値を見せることが大切だという。

妙高市、妙高市にある日本唯一のアウトドア専門学校、国際自然環境アウトドア専門学校、日本能率協会マネジメントセンター(東京都)の3者で共同プログラムを作っている。内容は、変化への対応力を身に付ける人材育成のプラグラムだ。

竹内氏は「今の世の中は時々刻々と変化する、何が正解かが分からない時代だ。このようなビジネス環境では、起こっている事実を確認し、みんなで状況を共有しながら、何が最善かを合意形成し、行動できる自律型人材が欠かせない。そこで、開発したプログラムは、天候や路面など、状況が変化しやすい自然環境の中で、道に迷いそうになったときには方位磁石で現在位置を事実確認し、メンバーの意見に耳を傾けながら、それぞれが何をすべきかを判断して行動する、都会の会議室では絶対に体験できない妙高ならではのプログラムになっている」と語る。

状況が変化しやすい自然環境の中でのプログラム

 

テレワークの功罪と地方での可能性

また、竹内氏はアフターコロナでも、テレワークはなくならずに残ると予測する。

「まるまる前に戻るということはとないと思う。なぜならば、1か月や2か月の緊急の一過性だったら、元に戻るかもしれないが、さすがに2年間を都市部の人はかなりテレワークをしている。働き方に慣れたということが事実としてあり、ミーティングも会社に行かなくてもできる。今までは地方から都心に出向くのが当たり前だったが、今は極端な例では、今は時間さえ合えば即日でもZoomで話せる。そういう便利なところは絶対になくならないと思う」(竹内氏)。

一方で、結局コロナ禍で起きたことはコミュニケーションの分断だと竹内さんは言う。

「仕事はテレワークでもできる。一方で、リアルなコミュニケーションは減った。それだけに、多くの組織では雑談をはじめとした会話や場の共有が、信頼関係に与える影響を認識したのではないかと思う。一方で、在宅勤務のメリットも知る機会になった。今後、働き方は多様になっていくだろう。その意味では、出社と在宅のハイブリッド化していくのがいいのかもしれない」(竹内氏)。

しかし、どんなにハイブリッド化しても関係性は重要だ。そこで、妙高市グリーン・ツーリズム推進協議会では、そば打ち体験など地域の資源を生かして、組織のリアルなコミュニケーションの機会をつくる研修型の企画を提供している。

また、地方の可能性について竹内氏は、「人材の確保が難しい地方の企業ほど、テレワークを推進すればよいのにと思っている。テレワークが可能になると、今まで出会うことのなかった地域外の人材と出会う可能性があるからだ。また、今多くの大学生がリモートで学んでいるが、就職先を選ぶ際、多様な働き方ができる会社で働きたいと思うだろう。課題が多い地方の企業ほど、テレワークを導入することで可能性が広がる」と話した。

ワーケーションプログラムでは、焚火を囲んでのトークも行われる

(文・梅川康輝)

 

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