健康増進スポットとしての存在感を増す角田浜地区(新潟市西蒲区)

角田岬(新潟市オープンデータより)

日本海に面する保安林の中にあるマウンテンバイク・フィールド

春の訪れとともに自転車で健康づくりを始めたり、景色を楽しんだりしたいという人々が増えることが予想される。新潟市でも、新潟島自転車一周道が整備されているほか、新潟市内を自転車で巡るイベント「新潟シティライド」が毎年開催されている。

そんな中、平成28年に日本海に面する保安林(海岸からくる風や砂から住宅街を守る林)の中の丘に造られたマウンテンバイク・フィールド「角田浜トレイル」(新潟市西蒲区)にも注目が集まっている。ショートDHコースと、本格クロスカントリーコースがある。「保安林が風を防いでくれるほか、砂地で道がぬかるみになりづらいので走りやすい」。角田浜自治会の関係者とともに運営管理を行なう佐上商会(新潟市東区)の佐上博社長は話す。

角田浜トレイユ(佐上商会ホームページより)

コースマップ(PDF)

佐上商会は、自転車の販売・整備店と、二輪車の販売・整備店を新潟市東区で展開する。このうち自転車の販売・整備店「自転車の駅サガミ」には、様々なブランドの電動自転車、スポーツバイクを中心に、おしゃれチャリなどの自転車、自転車パーツ、関連用品がずらりと並んでいる。販売に加えて、先述の「サガミレーシング」や、自転車の愛好家お楽しみクラブ「orz racing(オルツレーシング)」を運営する。

このうち、サガミレーシングは、弥彦スカイラインの6km弱のコースを23分以内で走らなければ加入できず、メンバーも23名しかいない。ただ、orz racingは、加入条件も入会金もなく、50人ほどの愛好家が、この角田浜トレイルなどで自転車(ロードバイク、シクロクロスなど)を楽しんでいる。

なお自転車の駅サガミでは、クラブのロゴが入った専用ジャージ、ヘルメット、シューズなどを販売していて、費用がかかってしまうが、メンバーには安全のために購入をすすめている。また、店内では、ステッカー、Tシャツなども販売されていて、角田浜トレイルの維持管理費として活用されているという。また、貸切の際に発生する使用料金は、角田浜観光協会に寄贈されるという。

orz racing専用ジャージ

角田浜トレイル ステッカー

一方、昨年11月には、新潟市の補助金事業として、この角田浜トレイルで「第3回世界一短いダンヒルレースin角田浜」が開かれ、およそ50人が参加しレースを楽しんだ。「参加賞として、地元のグリーンズプラント巻の野菜セット、賞品として地元の自然の里かくだ山のコシヒカリを贈呈しました。またランチはカーブドッチ・ワイナリーが作ったものを提供しました。地域のPRができたと考えてます」。角田浜自治会の阿部高吉会長はこう話す。

【角田浜トレイル】
運営管理/角田浜トレイル管理室運営室
電話/025−275−3369(佐上商会)
営業日時/365日
利用料/無料
フェイスブック

世界一短いダンヒルレースin角田浜のポスター

 

保安林の育樹や不法投対策として誕生した「角田浜トレイル」

角田浜には、この角田浜トレイルだけでなく、「角田浜海水浴場」、恋する灯台に認定されている「角田岬灯台」、佐渡弥彦米山国定公園に属し県内に自生する草木のほとんどが見られる「角田山の登山道」の一つ(灯台コース)、「キャンプ場」などがある。海と山がすぐ近くにあって景色がよく、観光エリアとしても人気が高い。そして、この辺り一帯の土地は、角田浜自治体の共有地になっているだという。「灯台の付近からトレイルまで自治会の共有地です」と角田浜自治会の阿部高吉会長は話す。

だが、10年ほど前まで、昭和30年当時の役員名義の共有地だった。このうち角田浜トレイルのある周辺一帯は、約170名の地権者に膨れ上がりそのままの状態が続いていた。

「相続人が亡くなったり代替わりしたりして、管理ができなくなってしまう前に自治会の共有地にしよう」。こんな考えのもと、土地を自治会の共有地に変更する手続きで中心的な役割を果たしたのが、10年ほど前に自治会長に就任した阿部会長だった。

角田浜自治会の阿部高吉会長

とはいえ、任意団体の自治会では土地を登記できない。そこで、臨時総会を開催し認可地縁団体(法人格を持った自治会、町内会)を目指すことにした。その後、住民の8割が同意するなどという認可地縁団体として認可される条件などをクリアし、平成22年10月、認可地縁団体となり共有地の移転登記先が確立され大きな前進となった。

だが、角田浜地区の保安林は、各地の保安林と同様、マツクイ虫の被害で危機的な状況にあった。不法投棄の問題も発生していた。こうした中、解決策として浮上したのが、角田浜トレイルだったのだ。「トレイルを開設するには、保安林内の整備が必要となります。また藪化対策を行うため(林内に日差しが差し込み)保安林の育樹に繋がります。また、綺麗な状況を維持した上で、人影があれば、不法投棄の防止にもつながります。さらに自転車は健康増進になります。平成28年に、こうした構想を新潟県の地域振興局に行き、相談してきました」(阿部会長)。

県側の反応もよく、「緑の基金」森づくり事業を活用し開設することになったという。オープンから3年経った現在、土日は必ず利用者があり賑わっているほか、マツクイ虫に対すFる松の抵抗力が高まったそうだ。

また、先述の通り、角田浜トレイルに加え、角田山海水浴場、角田山登山コースなどもある。また昨年11月には、自治会共有地の一角に、阿部自治会長の知り合いが、キッズスポーツやシニアレスリングなどを行う「スマイルジム」をオープンしている。さらに角田山1周ハーフマラソンなどのイベントも開催されている。「(傾斜のある)キャンプ場も、冬期間、雪で山を走れなくなる県内山間部の高校の陸上部が練習に使っています」(同)。

まさにスポーツの盛んな地域になったといえる。

スマイルジム

 

スポーツ以外の構想も

一方、これまで角田浜地区の夏に賑わいを支えてきた海水浴場は、需要が減少傾向にある。そこで、灯台よりにある海水浴場周辺に、将来、海水浴場に変わる新たな目玉施設を立ち上げる構想があるという。

「場所は、灯台に近い側の海水浴場周辺で、明治35年当時の代表者110名の共有名義のため、自治会への移転登記は到底無理と考えていました。。しかし、その後、国会で特例制度(※)が作られ、約2年6か月の歳月、多くの関係者のご教授を頂き、平成29年10月、全ての共有地は自治会名義に登記されました。構想はその一環です」(阿部会長)。

ただ、この土地に新たなものを作るには、国定公園の中にあるため規制をクリアしていく必要があるほか、店を営業している人もいて、そうした方との調整が必要となる。「そうしたハードルを乗り越えながら、若い方を中心に、将来の地域の賑わいを創出するものを企画、実現化していって欲しい」と阿部会長は話していた。

(※)平成27年4月1日に地方自治法が改正され、認可地縁団体が所有する不動産に係る登記の特例制度が創設された。これにより、これまで登記名義人の所在が分からず認可地縁団体への名義変更が滞っていた不動産について、認可地縁団体からの申請により、市が公告手続きを経て証明書を発行することで、認可地縁団体が単独で登記申請を行うことができるようになった。

角田山(新潟市オープンデータより)

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