長岡市がイノベーション事業報告会を開催
長岡市は25日、アオーレ長岡で「長岡版イノベーション事業報告会」を開催。同市職員や地元の議員など総勢約150人が参加。新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、規模を当初の約半分とし、この他の職員には映像などで報告会の様子が見られる形での開催となった。
長岡市は、時代の変化の波を的確に捉え市民生活の向上と産業の活性化を実現するため、長岡版イノベーションの施策を展開。これら施策は「産業の振興・起業の促進」、「人材の育成」、「市民生活の向上」、「行政事務の効率化」の4分野で推進されている。
この日は、「産業振興・起業の促進」でイノベーション・ハブ、「人材の育成」でロボコン教室・プログラミング教室の開催、「市民生活の向上」で長岡市内でのシェアリングサービス、「行政事務の効率化」でNaGaOKaオープンイノベーションや全庁的に業務で活用できるICTツールといった5つの取り組み事例について、携わった各課の職員らが発表した。
イノベーション・ハブに関しては、IoTと介護の2分野の取り組みを紹介。このうち、IoTに関しては、製造業・IT企業・学生・金融機関・行政など異業種の人々が参加。市内企業が抱える共通の課題を抽出し、3つの課題について対応するワーキンググループを設置した。
3つのワーキンググループのうち、見積もりシステムのグループでは、見積もりが難しい新規品や1品モノの商品に関してIoTとAIを活用した自動見積もりシステムの開発に取り組んでいる。また、日報のデータ化に関するグループでは、紙媒体の日報をスマホやタブレットを活用した入力システムを作ってデータを管理し、検索を可能にするシステムを開発。既に1社が導入済だという。
さらに、技術・技能の見える化に関するグループでは、数値化・マニュアル化されていない熟練技術者の技術・技能を承継するため、モーションキャプチャやVRなど最新技術を活用したシステムを開発。このシステムの導入の背景には、近年の人材不足で文系の新人が入社することも珍しくなく、工学を学んでいない者でも短期間で熟練技術者に近づける仕組みを作る必要があるといった地域の事情がある。
また、全庁的に業務で活用できるICTツールに関しては、議事録作成業務を行うシステム「AmiVoice」や、RPA・AI-OCRを活用した手書き・手入力中心の業務を自動化した事例などを紹介。AmiVoiceはリアルタイム音声のみならず録音音声ファイルも認識し、ディープラーニングで使えば使うほど精度が向上していくシステムだ。
また、PC上での定型作業を自動化するRPAや、画像データのテキスト部分を認識して文字データに変換する光学文字認識機能OCRにAIを組み合わせたAI-OCRは12課32業務で既に導入済み。計6150時間の削減効果が認められ、この他の課でも導入を検討中だという。
発表終了後、全体の講評を行った長岡市長の磯田達伸氏は、「イノベーションは何も特別なことではなく、職員1人1人が取り組めるもの。引き続き各部課で積極的に推進し、市民のために必要な施策は何かという、市が本来求められる業務により注力できるようにしていきたい」と話した。