新潟市で発生の新型コロナのクラスターについて、新潟大学大学院の齋藤玲子教授が説明
新潟市では、5人の新型コロナウイルス感染者が同じ日に同一の卓球スクールを利用。同施設でクラスターが発生した可能性について、新潟大学大学院の齋藤玲子教授(公衆衛生学)などから指摘されていた。本件について、齋藤氏は6日、新潟市長の中原八一氏や同市関係者に対し、新型コロナウイルスの特性を交えながら説明を行った。
齋藤氏は、卓球スクールでクラスターが発生した可能性について、様々な原因が複合的に重なることで卓球スクールの利用が原因とみられる感染の集団ができた可能性を指摘。このうえで、「新潟市は卓球関係者の間で発生した感染者を綿密に調べている。このクラスターから外には、これ以上拡散しないだろう」との見方を示した。
具体的に、齋藤氏は、卓球施設でクラスターが発生しやすい理由について、ピンポン玉が風に影響されないよう締め切るなど換気を控える環境があるほか、テニスやバドミントンと比べて人が密集しやすいなどの条件を挙げ、「5名のうち誰かが早くに発症していたか、無症状でもウイルスを出しており、他の方にうつしたのではないか」と話した。
齋藤氏によれば、新型コロナウイルスの感染経路は2パターンあるという。1つは会話や咳、くしゃみによる飛沫感染。もう1つは、鼻や口から出てきたウイルスを手でぬぐい、この手で他人に直接・間接に触れる接触感染するパターンだ。咳やくしゃみはもちろん、会話でも飛沫は約1メートル飛び、これが対面の人の口や鼻から入ることで感染するという。
これらを卓球にあてはめると、応援や会話での飛沫感染が想定されるほか、顔の汗を手やタオルで拭いた際、鼻や口も一緒に拭くことでウイルスが付着し、この手でサーブや握手、汗のついた台を拭くなどして、最終的には他の人に接触感染させた可能性があるという。また、ウイルスが汗とともに体外に出ることはないという。
新型コロナウイルスの感染力は、インフルエンザと同程度で、平均して1人の感染者が2~3人にうつすという。ただ、新型コロナに特徴的なパターンとして、感染者の大体5人に1人くらいしか次の人にうつさないという疫学調査の結果が得られており、この意味ではインフルエンザより感染力は弱いとされる。
一方、新型コロナウイルスは、1人から複数の人にうつすクラスターを引き起こすといった、SARSにもみられる特徴を持つと指摘。このクラスターという用語は、1人から規模の大小にかかわらず複数人にうつしたケースに用いられ、家庭内感染でも用いられるという。国がクラスターを起こしやすい事例として、スポーツジムやビュッフェを指しているが、食べ物を介してうつることはなく、あくまで会食を通じた対面での会話でうつるという。
潜伏期間は人によってばらつきがあり、2~3日で発症する人もいれば、2週間経ってから発症するといったケースも確認されているという。WHOの報告によれば、症状の違いはあるにしても、大部分の人は感染すると何らかの症状が出ており、全く症状が出ないまま感染を広める「キャリアー」は少ないという。ただ、風邪のような症状で終始する人が大部分を占める一方、こうした人が感染拡大を引き起こしやすく、社会的には重大な影響を及ぼすとした。
感染しやすい年代としては働き盛りの50~60代が最も多く、子供から大人に感染するインフルエンザと違い大人がかかりやすい病気であり、最近の未成年者の感染事例も大人から子供への感染と説明。感染した際の重症化の割合は10%程度で、死亡率は1~2%だが、一方で、中国のデータを基づくと80代の死亡率は14・8%と高くなっている。年齢が上がるにつれ死亡率が増す意味では、高齢者にとって脅威となるウイルスと言えるだろう。
齋藤氏は、今後の懸念として、「患者が増えれば軽傷なら自宅待機しないといけない時期に来るかもしれない。今は全員入院しているが、どこかの時点で方針を切り替える必要が出てくるかもしれず、各所で連携が必要なるだろう」と話した。