新潟県五泉市に事業所持つ子会社を4月に統合 新潟県内で存在感を増すデンカ(東京都)
デンカ株式会社と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。サッカーアルビレックスの本拠地もしくは、化学メーカーとしてご存知の方も多いのではなかろうか。そのデンカが4月に新たな局面を迎える。五泉市に主力の生産拠点を抱える診断薬メーカー「デンカ生研」を統合するのだ。グループ全体で6000人いる従業員のうち、およそ2000人が県内に勤務しているデンカグループ。つぎの100年に向け、歩み始める―。
デンカは1915年に石炭窒素の事業化に進むべく、三井系各社が出資して設立。1917年には青海工場(糸魚川市)の稼働も始めた。青海工場には石灰石資源を持ち、製品の安定的な供給ができると判断され、設置が決まった。一方、4月に統合がきまったデンカ生研は、1950年に現在の東芝の子会社として五泉市に工場が設置され、1994年には2か所目の工場も市内に増設され今に至っている。
地域貢献への姿勢も目覚ましい。2019年10月、デンカは、同年12月末で期限を迎える陸上競技場「新潟スタジアム」(新潟市中央区)のネーミングライツ(命名権)契約を更新することで、新潟県およびアルビレックス新潟(同中央区、是永大輔社長)と合意した。契約期間は2020年1月からの3年間で、「デンカビッグスワンスタジアム」の愛称が引き続き使用される。契約金額は消費税など込みで年額4730万円。
契約にはネーミングライツのほか、県はサブグラウンド「デンカスワンフィールド」の命名権や年3日以内の同スタジアム無償使用権、常設広告看板の掲出権などを付帯。アルビレックス新潟は、ネーミングライツスポンサーを表現するロゴの制作と掲出などを含ませた。
更新契約の締結式で、花角英世県知事は、「県内に主力工場のあるデンカは、地域貢献と共生に強い思いを持っている。県にとって素晴らしいパートナーだ」とたたえた。
また昨秋までは青海工場で生まれた廃熱で養殖していたウナギを地元の直売所や飲食店でも発売するなど地域との共生の姿勢を忘れていなかった(ウナギ発売は昨今の水産資源減少により撤退)。
今回デンカ生研とデンカを統合することで、意思決定の迅速化、そして国連が定める「持続可能な開発目標(SDGs)」のゴール3「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する」達成への後押しを図るのが考えだ。またデンカの一事業所となることで、「従業員の皆さんに、より世界へ羽ばたけるフィールドを作り、モチベーション高く働いていたければとも考えている」とデンカライフイノベーション部門長でデンカ生研の高橋英喜社長は話す。
現在稼働しているデンカ生研の工場も稼働を進めながら更新もする「スクラップ&ビルド」も必要になってくる。そんな際にも意思決定の速さが不可欠だ。特に同社は新型コロナウイルス感染症「COVID-19」の簡易検査キット開発にも着手した。それだけ素早さがものをいうフェーズに届きつつある。同社の主な得意分野は「ガン」「生活習慣病」「感染症」。日本環境感染学会などが主催するプロジェクト「FUSEGU2020」にも参画し、東京オリンピックパラリンピックの安全な開催に貢献する姿勢も示している。
デンカグループは新潟県を主な事業基盤に、全国へ、世界へ羽ばたき続ける。
※biz Link2020年3月10日号より転載