多様性のある佐渡の農業を持続可能にする取り組みを行うJA佐渡
国内各地では、農家の高齢化による後継者不足が深刻な問題になっている。佐渡でも後継者不足は大問題だ。こうした中、JA佐渡では、佐渡の農業を持続可能なものにするための取り組みを推進している。
その一つが佐渡市認証米制度「朱鷺と暮らす郷」だ。「生きもの調査を年2回実施する」「農薬・化学肥料を減らす」「江を設置する」「冬期田んぼに水を張る」などの条件を満たした米を佐渡市が認証する制度だ。朱鷺の放鳥を機に、朱鷺が暮らせるようにしようと始まった。現在、JA佐渡管内で生産される米の2割が認証米になっている(農家数で言えば、3000農家のうちの約400農家が認証米の生産に関わっている)。
だが、江の設置などは重労働だし、冬に水を張ると土が軟らかくなり作業がやりづらくなる。加えて、認証米になっても所得が大幅に向上する訳ではないという。認証米は「佐渡全体のブランド力向上に貢献してきた」(堅野信代表理事専務)ほか、地域の自然環境を守る農業を行うことは生産者の農業に対する誇りを高めてきた。
その一方で、自動化、省人化などで、作業の負担を軽くし後継者を確保しようという流れと逆の方向とも言え、農家数(後継者数)の増加にはつながりづらい構造にあるのだ。そこで、「人口や農家が減少する中でも地域の方からも参加して頂くことで佐渡の農業を持続可能なものにしていこう取り組みをはじめた」(同)。
これまでも、地域住民参加により年2回の生き物調査を行ったり、コープデリが「佐渡トキ応援お米プロジェクト」に取り組んだりと、農家だけでなく地域全体の活動は行われている。こうした取り組みに加え、今年1月から、集落単位で農業を守っていくための仲間づくりをいかにしていくかを集落に入り話し合う取り組みをスタートさせたのだ。
園芸による農業活性化も
一方、JA佐渡では、米と園芸などの複合経営による高所得化も支援している。たとえば、一大ブランド「おけさ柿」は、栽培の自動化が難しい品目だ。そこで3年前から、等間隔で植え付けた樹を繋げる「ジョイント栽培」を柿の品種「平核無」では全国で初めて取り組み始めた。これにより、早期の成園化(早く果実が成りやすくなる)と作業の負担が大幅な軽減が期待できる。この栽培方式は、現在佐渡で2ヘクタールに拡大し、今年には一定の収穫量が見込まれている。
またJA佐渡管内では、子牛を育て全国各地の産地に年間300頭を送っている。こうした中、2018年、「子牛生産者の労力軽減」、「佐渡牛ブランドの確立」、「研修施設の充実による子牛生産者の確保」などを目指し、最大子牛240頭と250頭の繁殖雌牛を飼育できる「大型和牛繁殖支援施設」を開設した。この施設の稼働により、現在の市場上場子牛300頭の規模を400頭に高める計画だ。また「施設の稼働により、牛糞を完熟堆肥に製造し稲WCS(ホールクロップサイレージ)の栽培に使い、刈り取った稲を施設の牛の飼料にするという循環が出来上がったという。「稲WCSの栽培契約面積も拡大しました」(同)と話す。
このほか、みかん(みかんは一定規模の経済産地では日本北限の生産地)、りんごを始め様々な品目が生産されているほか、関連会社の佐渡乳業で、牛乳、チーズ、バターの生産、バターづくり体験の提供なども行なっている。このうち、みかんは、柿に比べて軽量(つまり作業が楽)であることなどから、今後期待できる品目。「平地では春から秋に米を生産し、秋に秋、冬にみかんとういうモデルも可能ではないか」(同)と話していた。ちなみに、みかんでは、(温度と湿度が冬期間は一定の天然の冷蔵庫とも言える)金銀山の坑道で保存した「金山みかん」の商品化にむけて研究を開始している。
※biz Link2020年3月10日号より転載