新潟県糸魚川市の海洋高校のアカムツ、3年以内に放流目指す
新潟県糸魚川市の新潟県立海洋高校が昨年人工授精に成功したアカムツが順調に育っている。同校は2018年10月にマグロ養殖で有名な近畿大学と提携し、高級魚のノドグロと呼ばれるアカムツの人工授精に成功。世界で2例目、高校では初という快挙だった。今後は完全養殖ではなく、資源の保全の意味から1000尾単位で3年以内に日本海への放流を目指す。
同校の増田真之介教諭が指導を担当し、資源育成コースの生徒2、3年生約40人が飼育管理を行った。アカムツに関しては、過去に新潟市水族館マリンピア日本海が世界初の人工授精を成功させ、現在は飼育・展示している。同校と近大との提携は教授が高校で講義をしたり、アカムツの養殖に関して情報交換をしたりしている。
近大と提携する前の2018年9月に漁獲されたアカムツの採卵と船上での人工授精を行ったが失敗。この時は通常時間の深夜3時ころに漁に出たが、時間が早すぎてメスの卵が出なかった。2019年9月に夕方6時ころに特別な操業で再挑戦し、卵が出て人工授精に至った。マリンピアは新潟県寺泊で人工受精を行ったが、寺泊は漁が夕方だったことなどから、そこからヒントを得た。
アカムツの漁獲量は新潟県でも数10トン程度で、全国的にも多いほうだという。大きいサイズだと1キロ1万円以上するという。アカムツは脂がのっていて、焼き魚や煮物が美味しいと言われている。アカムツは冷たい水温を好む魚で、同校の施設には冷却装置がない。夏場に26から28度になると魚が死んでしまうため、通年での飼育は難しいと判断、同校では養殖せずに海に放流することを目指している。
同校はこれまでヒラメやオニオコゼなどを飼育していたが、新しいものを探していたところ、ノドグロの人気が高いことや新潟県の名産品でもあることから、アカムツの人工授精を始めることになった。水産高校は単独では全国で20校しかなく、全国的にも同校のように魚を飼う設備が整っているところはあまりないという。
同校は今春の入試では定員80人のところ、80人の応募があり、定員割れは免れた。同じ自治体の糸魚川高校や糸魚川白嶺高校が定員割れをしたことから考えれば健闘している。上越地域以外にも長野県、群馬県からの生徒が多く、埼玉県、大阪府、東京都など県外からの入学者が多いことも特色だ。
同校は魚醬「最後の一滴」などを販売する能水商店として株式会社化したり、糸魚川のSKフロンティアと協力し、キャビアを取るためにチョウザメの養殖などを行うなど県立高校の枠を超えた存在となっている。
増田教諭は「アカムツは放流して資源保全をしたい。漁師さんもご協力を頂いているので、漁師さんが継続して獲っていけるようにしたい」と話している。