特定非営利活動法人はっぴーはーと(新潟県上越市)青木貴子代表理事 「いい母を演じなくてもいい」
特定非営利活動法人はっぴーはーと(新潟県上越市)の青木貴子代表理事は短大(専攻科)を卒業して、助産師の資格を取得した。上越市内の県立病院で働いた時に男児を2人出産した後、上越市内の産婦人科クリニックに勤務し、そこで3人目の女児を出産した。
「特に総合病院は退院した後はお母さんとほとんど関わらない。実際に私も子供を産んで、退院した後のお母さんの支援だと気づいた」と話す青木代表理事は、産婦人科クリニックを退職してから、新潟県上越市の委託で新生児訪問、3か月健診の助産師の母乳相談などを手がけていたが、その度に再度、別の産婦人科クリニックに勤めた。助産師人生は24年になるという。
平成23年で産婦人科クリニックを退職した青木代表理事は、平成24年10月からはっぴーはーとの前身となる活動を1人でスタートした。収益性はなく、ほとんどボランティア感覚だった。
「個人でやっていると、行政に必要性を訴えてもサークル活動としか見てもらえなかった。しかし、思い悩むお母さん達の声が減ることはなく、助産師として必要なことだと思ったので、法人化を決意した」(青木代表理事)。
関東圏で仮に同様のイベントを実施した場合に参加費1万円をもらえるような内容をはっぴーはーとでは3,000円台で提供している。はっぴーはーとのサービスはベビーマッサージのほか、母親へのマッサージもある。
「お母さんはもっともっとと求められる」
「お母さんは、妊娠中も赤ちゃんのために体重管理をしっかりしなさいとか、こうあらねばならないというものがある。子供のために自分を犠牲にしている。少子化の中、お母さんにはお産後もすごく責任感がある。もっと、もっと、と求められる。しかし、はっぴーはーとは、いい母を演じなければいけないというのではなくて、息抜きをして、お母さんの自己肯定感を高めてほしい」と青木代表理事は話す。
さらに、こう話す。「人には言えないマイナスな感情でもこの会では言うようにしている。女性は共感したい。同じ子育てをしているつらさや悩みを聞いてもらい、それに頷いてくれる人がいる。参加する半分以上が2人目を産んだお母さん方がはじめてのお母さんにアドバイスしている。支え合う理想的な会だ」。
ベビーマッサージは、母親が自分の赤ちゃんの肌に触れるので、赤ちゃんの気持ちが落ち着く効果があるほか、血行が良くなり、便秘解消になる。また、軽い全身運動にもなるので、その日の夜にはよく寝たという母親からの報告もあったという。
一方で、ベビーマッサージは、母親の方にも効果がある。赤ちゃんに対していいことをしているという自信になり、自己肯定感が高まる。また、家で子供が泣いた時に、あやすひとつのツールとして覚えてもらっている。
また、産後の尿漏れや腹部のたるみ、冷え性などといった女性の悩みに特化した骨盤底筋群を鍛えるトレーニングの「ひめトレ」を行っている。
クラウドファンディングにも挑戦
また、クラウドファンディングサイト大手の「キャンプファイヤー」にて、生後8週までの赤ちゃん預かり事業を実施するため、3月下旬まで目標金額150万円のプロジェクトを実施している。
このプロジェクトは、上越市には母親が退院後から生後8週までの赤ちゃん預かりをする制度がないことから発案された。制度がないにもかかわらず、産後肥立ちが悪く、再入院する母親や産後うつを発症し、まずは自身の心身の回復が最優先になる母親もいることから、青木代表理事は必要性を強く感じたという。
「お母さんも子供から離れたい時がある。一瞬でも子供のことを忘れて、おしゃべりに集中したいと思っている。うちの法人はそういう場所の提供をしている。コロナ禍で、4人に1人が産後うつになると言われているくらいだ。2週間以内に治るのがマタニティーブルーだが、2週間以上続くと産後うつになる。ならないように気持ちを吐き出す場所が大事だと思う」(青木代表理事)。
「実は私も1人目を産んだ後に産後うつになった。職業柄、『助産師なのに知識がないのは恥ずかしい。もっと子育てを上手にしなければならない』というプレッシャーがあった。しかし、挫折を経験したので、アドバイスするのにはよかったと思う」と話す青木代表理事。
育児で疲れた母親に笑顔になってもらいたいという思いを開業助産師として追求する青木代表理事の今後の活躍に注目していきたい。
(文・梅川康輝)