5Gを活用した技術承継への取り組みが公開、新潟テクノスクール(新潟市中央区)と燕市の包丁職人による実証実験が実施
株式会社BSNアイネット(新潟市中央区)、株式会社MGNET(新潟県燕市)、株式会社ドコモCS新潟支店(新潟市中央区)の3社が取り組んでいる5Gを活用した新技術による伝統技術承継の実証実験が25日、新潟テクノスクール(新潟市中央区)にて実施され、報道関係者に公開された。
この事業は「令和3年度新潟県5Gソリューション開発促進事業」の補助金を使った取り組みで、職人の技術を5Gを用いたデジタル技術によって伝承していこうという目的で行われているもの。遠隔による指導を実現させるとともに、職人が行う作業の感覚的な力の入れ具合などをデータ化し蓄積することで、多くの職人が持つ伝統技術を承継させていくことを目指している。
今回行われた実証実験は、新潟テクノスクール会場と包丁などを製造販売している藤次郎株式会社(新潟県燕市)の会場とをオンラインでつなぎ、包丁づくりの工程の一つである「曲がりとり」を包丁職人が生徒に対して指導を行った。
指導にあたっては、5Gを利用した3つソリューションを使用。1つは、マルチカメラによる複数角度からの映像を撮影することができる「MULT-i」、2つ目は使用者の目線の情報を伝えることができるARグラス「AceReal」、そして3つ目は腕などの筋肉の変位データを収集し可視化することができる世界初の光学式筋変位センサー「FirstVR」。この3つを職人と生徒が双方で使用し、細かい動きなどを網羅するコミュニケーションをとることができる。
新潟テクノスクールの生徒は、職人からの指導を受けながら「曲がりとり」作業に挑戦。職人からは「もうちょっと細かく(叩くように)」「そうそう、そんな感じ」と、モニターに映る映像や音声を通して具体的なアドバイスがされていた。
指導を受けた生徒は、「直接、職人から離れた場所でも指導いただけるのは、すごいなと感じた。わからないところを具体的にすぐに聞くことができた。ただ、力の入れ具合などは、職員さんが側にいてくれる場合と比較すると、ちょっと難しいかなと思った」と感想を話した。
5Gを使った技術承継システムによる今後の展望として、職人の技術をデジタル化して、データーベースに保存することで技術を未来へ承継するほか、企業の社員研修や企業間の技術交流、海外工場への技術指導などへの展開が考えられるという。
BSNアイネットの産業ビジネス事業部事業戦略担当の大橋岳彦マネージャーは、「今回は(職人の)データをとるだけだったが、今度はデータを相手に伝えて、相手が実際にやっているような感覚を伝える技術も進んでいくと思う。来年度から徐々にビジネス化に向けて動いていければと思っている」と話した。