「何もしない贅沢」を求め、富裕層の観光客が集まる赤倉観光ホテル(新潟県妙高市)
「ミシュランガイド新潟2020」の4つ星に選ばれた赤倉観光ホテル(新潟県妙高市)。新潟県で4つ星を獲得したホテルは赤倉観光ホテルを含めて、わずか3か所のみだ。過去には昭和天皇が宿泊するなど、国内リゾートホテルの草分け的存在でもある。赤倉観光ホテルや赤倉観光リゾートスキー場、赤倉ゴルフコースなどを統括する赤倉観光リゾート&スパの後藤幸泰支配人にコロナ禍での営業状況などを聞いた。
「2021年のスキーシーズンは、年末年始に緊急事態宣言が発動されたほか、緊急事態宣言が明けた1月の3連休は新潟県上越市に大雪が降るなど、スキー業界としては苦しんだシーズンだった。三重苦、四重苦だったと思う」と後藤支配人は語る。
同ホテルに隣接する赤倉観光リゾートスキー場も前前年比では40%台だった。インバウンドはほぼゼロで、同スキー場では減少を見込んで、計画運休もしていたという。
昨年グリーンシーズンはコロナ禍前の水準に
一方、2021年のグリーンシーズンは、コロナ禍前の水準に回復した。2020年は国のGOTOキャンペーンや県民割などがあったが、2021年も県民割キャンペーンの利用客が来た。県内の利用客はほぼ県民割を利用していたという。2021年は、首都圏や県外からも来ており、個人客が中心で、自家用車での移動が増えたのが特徴だという。
「弊社は、団体客は取らない。ツインルームなので、夫婦やカップルが多い。団体で騒ぐ客ではないので、新型コロナウイルス感染も出なかった。従業員は、健康チェックや手洗いなどはもちろんしっかりやっている。従業員寮もあるが、個室にしている。レストランでも飲酒して大声を出すという客はいない」(後藤支配人)。
同ホテルの宿泊料金は3万円台から6万円台で富裕層向けだ。GOTOキャンペーンでは、4万円の部屋がほぼ半額になったことから、上限ギリギリの4万円の部屋があり、この部屋はGOTOキャンペーンの利用客ばかりの状態だったという。
「価格の高い部屋から埋まる」
「コロナ禍になってからは、価格の高い部屋から埋まる。高い部屋には露天風呂が付いているからだろう。お客様の中には大浴場を気にする方もいる」(後藤支配人)。
後藤支配人は「初めてきたというお客様に話を聞くと、『毎年海外に行っていたが、海外に行けないのでホテルの評判がいいので来てみた』というお客様もかなりいた。こうしたお客様は家族でハワイに1週間くらい滞在するので、逆に弊社は安く感じるかもしれない」と話す。
また、同じ妙高市内の近隣には、同じ富裕層を狙ったロッテアライリゾートがある。
「ロッテアライリゾートさんとは狙っている層が違う。あちらはアクティビティがしっかりしているので、たぶん、弊社よりも年齢層が若いと思う。弊社は、夏は小さい子供がいる場合は退屈かもしれない。首都圏から来る方は『何もしない贅沢だ』と言われる。露天風呂付きの部屋は特にそうだが、一回部屋に入ると、食事以外出てこない。おそらく、風呂に入って、ビールを飲んで、昼寝をするなどそういう感じだと思う」(後藤支配人)。
今スキーシーズンは、屋外スポーツという面での安心感で、国内需要の掘り起こしを狙っており、前前年比60%を見込んでいる。スキーは年によって違うが、ゴールデンウイークまで滑走できるという。
広瀬香美さんが無料ライブ
2月23日には、歌手の広瀬香美さんが赤倉観光リゾートスキー場のゲレンデで無料ライブを行い、盛況を博した。
芸能人によるプライベートの来訪もあるという。後藤支配人は「以前、タレントのマツコ・デラックスさんが、『コロナ禍でどこにも行けなかった。今行きたいのは赤倉観光ホテルだ』とテレビの全国放送で話した。その後、すぐ電話がかかってきた」と笑う。
最後に、後藤支配人は「お客様の期待感がすごく上がっているので、従業員は今まで以上にお客様が求めているものを先取りして、どうやったら気持ちよく滞在してもらえるかを考えなければならない」と気を引き締めていた。
(文・梅川康輝)