コジマタケヒロのアルビ日記2022 Vo.2 伊藤涼太郎「完全移籍のワケ」
きっと誰もが順風満帆な人生を送りたいと思っているだろう。でも、必ずしもみんながみんなうまくはいくわけではない。ときに立ち止まって自分と対話すること。大きな決断をくだすこと。痛みをどこかで感じつつ、前に進み出さないといけないことだってあるはずだ。
「なかなかうまいこと、いかない6年間でした。自分が思い描いたようなプロサッカー人生を送れていないというのが率直な意見です。ただその6年間の中で、自分のサッカー経験として生きることもたくさんありました。自分が試合に出られない原因、活躍できない原因というのを多く知れましたし、研究もするようになりました。ひとりのサッカー選手として、かけがえのない時間だったと思います。決して無駄ではない6年間だったと」。
話を聞いたのは2022年3月2日。この前日、3月1日に伊藤涼太郎選手は入籍した。
「移籍時のコメント内で使用した、【大きな覚悟を持っての完全移籍】という表現の中には、入籍・結婚に対しての覚悟も含んでいました。入籍もしましたし、今までよりもさらにサッカーに対する熱量を上げていかないと」。
完全移籍という決断に至るまでには非常に悩んだと話す伊藤選手。昨季、J2・水戸に移籍した際、チームメイトに「今年、J2前半で対戦してどこが一番強かった?」と聞いたことがあったそうだ。答えのほとんどは「新潟」。試合を見てみると、自分たちでボールを保持するのはうまいし、中央でもサイドからでも崩せる。新潟は魅力的なサッカーをするチームという印象だったそう。
「期限付きではなく、完全移籍を選んだのは、もっとチームに対しての思い入れや気持ちがより一層新潟に集中できると考えたから。本気で活躍するための、完全移籍という決断です」。
今季のアルビレックス新潟の中盤は、ツーシャドー・ワンアンカー。伊藤選手はツーシャドーの一角として、これまでの試合に起用されている。
「たくさんボール、そしてゴールにもしっかりと関わらないといけない。だからこそ、今年は数字を意識して、1年間プレーしたい。アシストも大事ですが、個人的にはゴールにこだわりたい。ゲームを組み立てる、ラストパスを出すというのも自分の持ち味だと思っています。でも、ゴールを取れる選手ってどこのポジションにいても怖い。プロとしてやってきた中で、これをすごく痛感しました。それに僕としては、ゴールを取る瞬間が一番楽しいし、気持ちいい。サポーターの方に僕のゴールを見てもらいたいと思いながら、常にゴールを一番に意識したプレーをしています」。
15点、2桁アシストを今季の目標に掲げる伊藤選手。2022シーズンのホーム開幕戦は、3月5日。相手は山口。華麗なターンから相手ゴールへ迫る、ドリブル。そこからのシュート。覚悟を持ってやってきた新天地での初得点、楽しみでしかない。
◎アルビライター コジマタケヒロ
練習、ホーム戦を中心に日々取材を続ける、アルビレックス新潟の番記者。また、タウン情報誌の編集長を務めていた際に、新潟県内の全日本酒蔵をひとりで取材。4冊の日本酒本を出した、にいがた日本酒伝道師という一面も。(JSA認定)サケ・エキスパート