新潟県糸魚川市の能水商店が魚醬を使用した加工食品の販売を強化
株式会社能水商店(糸魚川市)は、主力商品の魚醬を使用した加工商品の販売を強化する。数年前にテレビの全国放送で取り上げられた主力商品の魚醬「最後の一滴」のブームが一巡したことから、加工食品の新製品を投入し、市場の開拓を図る。
同社は県立海洋高校(糸魚川市)の教諭だった松本将史氏が同校を退職し、同窓会組織である一般社団法人能水会から事業を継承して、2018年4月に松本氏が退職金を原資に立ち上げた会社。商品を製造・販売した収益を海洋高校の学習環境に還元させる目的や、サケ放流の作業者が高齢化していたことを危惧し、会社を設立した。現在でも同高校の食品科学コースの生徒が週一回、総合実習などの授業として作業に関わっているが、ほとんどは同社の従業員が作業を賄っている。
「最後の一滴」は2013年に海洋高校の生徒が開発した商品で、糸魚川市周辺の川に遡上するサケを原料とし、上越市内の町田醤油味噌醸造場のしょうゆこうじなどを混ぜて発酵させた魚醬の一種。通常は1年以上熟成させるが、同商品は2、3か月と短期間で仕上げるため、魚醬独特の臭みなどがないのが特徴。
「最後の一滴」という商品名には、糸魚川で最後を迎えるサケを大事にしたいという思いと、料理の最後に隠し味にすると美味しいという意味を込めているという。
しょうゆの代わりにおよそ半分の量を使用すればよく、卵かけごはんやカレー、パスタソースにと用途は広い。2015年に日本テレビ系列「満点☆青空レストラン」に「最後の一滴」が取り上げられ、全国から問い合わせが来るなど商品の認知度が上がったが、現在はブームが一巡。クラウドファウンディングで資金を集め、「最後の一滴」のパンフレットを作成するなど盛り返しを図っている。
現在は「最後の一滴」を使った一夜干しいかや、塩辛、トラウトサーモンなど数々の加工品を販売しているが、今後は東京のイタリアンレストランと共同開発したパスタソースや、同校相撲部が開発したレトルトパウチのシーフードカレー(6月発売)などを発売する予定。
松本社長は「弊社の取り組みの中で、海洋高校の県外出身者も増えたし、若い人の雇用にも繋がっている。生徒のインターンの場にもなる」と話している。