雇用調整助成金、新型コロナの特例で条件緩和されるもなおもハードルが存在
新型コロナウイルスの影響で飲食店などを中心に経営環境が大幅に悪化していて、従業員を休業させる店舗も現れ始めている。こうした中、厚生労働省の「雇用調整助成金」に関心が集まっていて、厚労省では、この助成金制度にコロナ関連の特例をもうけ、コロナで厳しい経営環境に追い込まれた店舗などの支援を加速している。特例により、事業所設置後1年未満の事業主でも支給の対象となったが、新規店舗にとっては、なおも高いハードルが立ちはだかっているようだ。
雇用調整助成金とは、経済上の理由による事業縮小を受けて、従業員を一時的に休業等させざるを得なくなる中で、労働者の雇用維持を図った場合、その休業手当や賃金などの一部を助成する制度。今回、この助成金に新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた特例ができて、通常の雇用調整助成金で設定されている1年間に100日という受給限度日数と別枠での利用が可能となった。対象は4月1日から6月30日までの休業。
また、通常、助成対象となる労働者は6か月以上継続雇用された従業員だが、特例で、新卒社員など継続雇用期間が6か月未満の労働者や、雇用保険に加入していない労働者(労働時間が週20時間未満のパートやアルバイト等)も対象に含まれた。
さらに、事業活動を比較する期間や売り上げ・生産量の減少幅に関する条件も緩和することで、創業したばかりで事業所設置後1年未満の事業主も支給の対象とした。具体的には、「最近3か月の月平均の売り上げ・生産量などが前年同期比で10%以上減少」という条件を、「申請を行った前の月の売り上げ・生産量などが前年同月比で5%以上減少」に変更。さらに、前年同月比で比較できない場合には、昨年12月の実績と比較できるようにしている。
だが、今年3月にオープンした新潟市中央区の飲食店店主は、「想定していた以上に売り上げが厳しく、4月半ばに雇用調整助成金などを頼れないかと労働局の相談窓口を訪れたものの、断られた」とため息交じりにこう語った。今年1月以降に新規オープンした店舗については、比較対象となる昨年12月の売り上げ実績が存在しないため、雇用調整助成金の支給対象にはならないというのが理由という。
「新規開店した店舗は、オープン当初がもっとも書き入れ時と言われるのに、その特需がないうえ、開店のための初期投資もかさんでいて、経営的に厳しい新規店舗はかなり多いのではないか」(店舗関係者)という指摘もある。新たなスタートを切った人々を含めた新型コロナウイルス感染症に関する、もう一歩踏み込んだ雇用維持の救済策が待たれる。