(株)高田デザインスタジオ(新潟県上越市)の稲場晃美代表取締役(川崎市出身)「不動産を通じて東京と上越の人を繋ぎたい」
株式会社高田デザインスタジオ(新潟県上越市)の稲場晃美代表取締役(川崎市出身)は、2003年に当時の「宅地建物取引主任者」資格を取得し、首都圏で不動産業に勤務していた。2012年に夫と結婚したが、2014年に夫の実家に近い上越市に引っ越してきた。夫は心臓が悪く、故郷に戻れば良くなるだろうという判断からだった。上越市の新潟労災病院の近くにアパートを借りた。
稲場代表取締役は上越市内で建築関係に勤めたが、「今まで東京でとにかく忙しく働いていたので、上越市は時間がゆったりしすぎていて、“日本海ブルー”になってしまった」と苦笑する。少し鬱っぽくなってしまったという。
また、稲場代表取締役は「不動産業界で働きながらいつも疑問に思っていた。企業だから当たり前なのもしれないが、なんで自分の会社ばかり儲けてお客さんのことを考えないのかと」とも話した。その自分の中でのわだかまりが起業に結びついたのかもしれない。
そんな中、看病の甲斐もなく、夫は亡くなった。
宅建資格を活かして起業
当時、面接を受けていた不動産関連会社も不合格になり、理想の不動産会社を作るために、一念発起して起業を決意した。
そのために、上越商工会議所(新潟県上越市)の創業塾を受講した。自己資金を中心に2017年8月に会社を設立し、同年11月にオープンした。しかし、会社を設立してもすぐには宅建業の免許の許可が下りなかった。宅建業免許取得の欠格要件に該当していないか調査されるためだった。
土地勘もない場所で創業したため、とにかく1年目が大変だったという。しかし、自身のフェイスブックを通じて美味しいラーメンの情報を発信したりするなどして、上越市で友人が増えたこともあり、リフォーム物件や土地、建物の売却で凌いだという。
2年目から事業が軌道に乗り、利益が出るようになったという。現在、創業6年目だが、売上高の半分はリフォーム事業だ。中古物件価格に顧客の要望に合わせたリフォーム費用を合わせ、かつ、株式会社第四北越銀行(新潟市中央区)などの金融機関と提携し、住宅ローンの融資相談までトータルでワンストップのサービスを提供している。
不動産業界の現状について、「超高齢化と人口減少が影響している。地方は人材不足だし、私は首都圏にいたこともあって、東京に事務所を構えている。コロナ禍でなかなか上越市に帰られない出身者が東京で相談を受けることが多い。都心の直下型地震のリスクもあるため、地方への移転のニーズもある。その意味で、不動産を通じて、東京と上越の人を繋ぎたい」と語った。
また、「移住希望の若い人は仕事がセットになる。その意味では、所属している新潟県中小企業家同友会の企業が人材を募集しているので、その紹介もできる」と話す。
フェイスブック友達は4,000人
稲場代表取締役は以前、上越市の移住インフルエンサーもしていた。フェイスブック4,000人という桁違いの友達の多さを見込まれ、任命されたものだ。フェイスブックの投稿で、上越市の魅力を発信していたという。
また、上越市の魅力について、「上越市は海があり、自然が豊か。また、日本酒やラーメンが美味しい。そして、何よりも魚の白身が美味しい。関東はマグロなどの赤身を食べる習慣があるが、キスを刺身で食べるのは上越市で初めて知った。以前は天ぷらしか知らなったので」と語る。
最後に稲場代表取締役は「弊社の経営理念は『人生をハッピーに』だ。とにかく自分が楽しんでいる姿をフェイスブックを通じて、周りに発信していきたい」と話していた。
(文・梅川康輝)