上越初のニート・ひきこもり支援の特定非営利活動法人えちご若者元気塾
ニート・ひきこもりが国内で問題視されて久しいが、日本ではその数は60万人とも70万人とも言われている。ニートとはNEET(Not in Employment、Education or Training)の略で、直訳すると就業、就学、職業訓練のいずれもしていない人となる。上越市の特定NPO法人えちご若者元気塾は2009年、新潟県上越地域ではじめてニート・引きこもりの就労支援機関として設立された。
特定NPO法人えちご若者元気塾は2006年に当時新潟県議会議員(1期目)だった梅谷守氏(現・同法人理事)が新潟市のハローワークでニート・引きこもり支援の若者サポートステーション事業について聞き、上越市に必要だと考えたのが始まり。
梅谷氏は、当時の県労政雇用課の課長から「NPO法人を立ち上げて実績をつくり事業の受託を目指すべき」との助言を受け、三条市のサテライト(出先機関)でニートの人などを支援していた社会福祉士の藤田健男(現・同NPO法人理事長)とタッグを組んで、2009年にNPO法人を立ち上げた。
梅谷氏は当時県議という立場上から理事長にはならず、藤田氏が代表となり、梅谷氏は理事に就任した。当初、事務所を計画していた場所での開設が困難になり、梅谷氏の元の居住地を事務所にした。近くにはスーパーや郵便局、市役所があるなど春日山駅も近く利便性もよかった。
しかし、資金力の問題で、サポート支援事業は他の団体が受託することとなった。現在、公益財団法人新潟県雇用環境整備財団が上越市内で上越地域若者サポートステーションを展開している。
一方、えちご若者元気塾は産業カウンセラーや社会福祉士などの有資格者がボランティアで活動している。借家を居場所として若者に開放し、毎週木曜日にはスタッフが常駐する。藤田氏によると、スタッフと若者が一緒になって畑作業をしたり料理をして食べたりするなどして、その中から支援するヒントを見つけているという。彼らの就職先はタクシーの運転手やスーパーのバックヤード、書店員など様々だ。
また毎週木曜日の夕方5時過ぎになると、OBの就労者が居場所の借家に集まるってくる。現在、同NPO法人の当事者メンバーは約30人で、男女構成は半々で年代は20代から40代だ。
「1年ひきこもっていれば、支援を開始して家から出ることに1年かかる。また5年ひきこもっていれば、支援を開始して家から出ることに5年かかると言われている。1年で結果が出る世界ではない」(梅谷氏)。
現在、前述の若者サポートステーションは39歳までと年齢を区切っている。それ以上のニート、引きこもりはえちご若者元気塾が引き継いで担当しているのが実情だ。
ひきこもりは家から出られない状態。一方、ニートは働いていないが、外に出られる状態。しかし、簡単に線引きできるわけではない。ひきこもりのきっかけは様々だ。就職面接に落ちたことや母親の死が受け入れられないことがきっかけになる人もいる。
梅谷氏は、「浄財を寄せきれない(寄付を集めることができない)で壁にぶつかっているNPOはたくさんある。アメリカには寄付文化がある。日本では社会構造的に寄付文化はないし、NPOは何ぞやという雰囲気がある。共鳴して寄付や会員になるという人はそういない。これからは国の政策としてNPOを下支えするような政策が必要だと思う。国が光を当たらないところをNPOがやっているわけで、NPOが安心してできるようにする必要がある」と話す。
少子高齢化時代で労働力不足が叫ばれる中、特に地方ではその傾向が顕著であり、その中でニート・ひきこもり問題の解決は大きな意味を持ってくるであろう。国の政策をはじめ、今こそ県内の支援機関や同NPO法人などの活躍の出番である。