伝統食を海外へ、上越地域で相次ぐ“アウトバウンド”の動き
インバウンドからアウトバウンドへ――。少子高齢化で国内市場が縮小傾向にあるなか、新潟県上越地域では海外市場の開拓に向けた取り組みが相次いでいる。首都圏のみならず、海外市場を見据えた動きで、特に日本酒や和菓子、寿司といった日本の伝統食の輸出が目立つ。新型コロナウイルスの収束後には地方から“ジャパン”を発信する試みとして注目されそうだ。
妙高市に本社を構える有限会社かんずりは、主力の辛味調味料「かんずり」の米国市場への展開強化を掲げている。同社は現在、米国のほか、オーストラリア、香港、シンガポール、台湾などで販売を展開しているが、今後は米国の現地法人を設立し、現地のスーパーなどに展開する予定。従来は日本人向けのスーパーに卸していたが、「かんずりはステーキにも合う。辛い物が好きな米国人に向けて販売を強化していきたい」(東條昭人社長)としている。
和菓子「出陣餅」で有名な上越市の株式会社かなざわ総本舗の金澤一輝社長も和菓子文化を海外へ発信していくビジョンを打ち出している。まだ、具体的な計画はないが、ヨーロッパはあんこを食べる習慣がないため、アジア圏を中心に販売していく方針だ。金澤社長は「日本酒が先に輸出された感があるが、和菓子も日本の文化であり、海外に発信したい」と話している。
「岩の原ワイン」を製造・販売する上越市の株式会社岩の原葡萄園も世界を見ている。同社の創業者川上善兵衛氏が日本ワインぶどうの父と言われているが、同社は新潟県内でも数少ないワイナリーで、国産ワインとして人気が高い。今後は新聞・雑誌広告におけるブランドイメージ戦略を強化する方針で、海外市場の開拓も視野に入れている。
糸魚川市の加賀の井酒造株式会社も将来的に海外市場を見据えている。同社は大吟醸などの価格帯の比較的高い日本酒のみを製造する。小林大祐第18代蔵元は「まずは足下を固めるが、東京や海外はマーケットとして無視はできない」と話す。
また、寿司店「富寿し」などを県内で展開する上越市の株式会社宮崎商店は同地域ではいち早く海外に進出し、すでにシンガポールに5店舗を展開している。
一方、アパレル分野でも妙高市にある制服販売の株式会社このみが中国への店舗展開を本格化させる。2018年に現地法人を設立、中国でネットでの制服販売が好調、今後も拡大が見込めることから、新型コロナが収束した後には重慶や上海に店舗を開設する方針だ。