北海道出身で、東京から移住し、建築業を起業した2級建築士の打田亮介代表社員
新潟県上越市在住の打田亮介氏は北海道の出身だ。道内の高等専門学校を卒業し、2008年に東京の設計事務所に就職。その後、8年半ほど東京で生活し、2016年9月に上越市に移住した。2019年に空き町家をシェアする町家の複合施設「兎に角(とにかく)」として再生・運営するために合同会社ニトデザイン&リビルド(新潟県上越市)を設立し、代表社員となった。
働き詰めの東京生活に疑問
何故、東京からの移住を考えたのか聞くと、打田代表社員は「東京で毎日満員電車に乗り、休みなく働き詰めで定年まで過ごすのだろうか、それでいいのかと疑問を感じ、地方移住を考えた。妻が新潟県の南魚沼市出身ということもあり、新潟には何度も来ていた。だったら妻の実家に車で行けるような距離のところが移住先として良いかなと思い、県内でいろいろと空き家などを見ているときに、高田の雁木町家が空き家だらけになっている事実を知った」と話す。
打田代表社員は、「雁木通りの街並みは他の街にはない珍しい街並みなのに、廃れてしまっているのはもったいない」と思い、この地で何かできないかと考えた。「そこで空き町家を再生したカフェを作れば、いろいろな人が訪れるほか、他の空き家活用に繋がっていくかもしれない」と考え、2017年1月に町家cafe「Re:イエ」を開業した。
いわゆる「外の眼」である。地元の人は当たり前でその価値に気付かない。打田代表社員は2級建築士の目からも町家に興味を持ったのだろう。カフェを開業したことにより、店に来る客からも町家のリノベーション工事を請け負うようになった。その後、上越市の高田駅前の複合施設「兎に角」の開業に合わせてカフェは閉店した。
起業は東京での会社員時代から考えていたという。移住した時もサラリーマンになる選択肢はなく、最初から起業のことが頭にあったという。
また、打田代表社員は、「東京にある上越市の移住相談センターに行った時から事業計画書を作っていた。カフェをやりながら、建築業をしていく計画だった。リスクは気にせず、何とかなるだろうと思っていた」と笑う。
“仕事が仕事を呼ぶ”好循環
今年1月から上越市在住の20代の正社員1人も採用した。それだけ、仕事が増えたということだが、不思議なことに新規開拓のための営業活動はしていないという。
「いろいろな人からの紹介で繋がっていったり、ホームページからの連絡が来たりすることで、おかげ様で途切れずに仕事がある。結局、仕事をさせてもらうのはあくまで人同士、いろいろな人と繋がればいろいろな仕事が来る。最初は知人もいなかったので、空き家を再生したカフェを作って、ショールーム代わりにした。カフェは老若男女いろんな人が来られる。それを見てリノベーションの依頼を頂けた。できるだけ、空間のデザイン性を高く作るようにしている」と打田代表社員は話す。いわば、“仕事が仕事を呼ぶ”好循環といえる。
打田代表社員は「今後のプロジェクトとしては、町家の共同住宅をリノベーションし、上越市高田地区の街なかに若年層が住めるような場所にしたいと思っている。4部屋を予定しているが、共有スペースもあるコミュニティアパートを作りたい。年内にはオープンしたい」と話していた。
(文・梅川康輝)