新潟食料農業大学(新潟県胎内市)、胎内市の「ししのくらの森」で採取・育種した酵母、胎内市の名水、胎内産の酒米で作った日本酒を製品化、30日から販売
2018年、新潟県胎内市に開学した新潟食料農業大学(NAFU)は29日、胎内市の自然界由来の酵母、胎内市の名水、胎内産の酒米で作った、NAFUブランドの清酒「純米酒『胎内ししのくらの森』」を、同じNSGグループである今代司酒造株式会社(新潟市中央区)と共同で開発、製品化したと発表した。
400リットルほど製造し、720ミリリットル入りを今代司酒造の直売所やオンラインショップで30日から販売する。アルコール度数は17.5%で、味は辛口。価格は1,980円(税込)で、500本の限定となる。
2018年の開学当初から教育・研究活動の一環としてNAFUブランド・胎内オリジナルの清酒製造の構想があり、2020年に製品化プロジェクトをスタートした。
プロジェクトでは、酒質の多様化(自然界由来の酵母)や、オリジナリティー(原料に胎内産の米、水を使用)にこだわった。
これまで清酒製造に用いられてきた酵母の多くは、各地の酒造場のもろみを分離源とした「きょうかい酵母」。これらの酵母は清酒の安全な醸造や高品質化に果たした役割は極めて大きいが、一方で清酒の品質の画一化をもたらした側面もあるという。そこで、清酒の需要低迷を打破し、輸出や国内需要拡大につながる酒質の多様化や、オリジナリティーにこだわったのだ。胎内産へのこだわりは大学がある胎内市の活性化にも寄与したいという狙いもある。
具体的には、胎内市の名所であるブナの巨大異形樹で有名な「ししのくらの森」と、ハマナスの群落と夕日・タ焼けの鑑賞スポットとして有名な「はまなすの丘」から、清酒製造に利用可能な酵母の候補株を試料採取。遺伝子解析の結果、清酒製造に利用できる可能性の高いことがわかり、ししのくらの森酵母を、より高品質の清酒の製造に適した酵母となるよう、この酵母と、既存酵母を交配させるなど育種改良した。
その後、育種改良した酵母、胎内産の酒米である「五百万石」、胎内市の名水である「どっこん水」を用いて、今代司酒造で製造を行なった。新潟食料農業大学のフードコース、発酵・醸造ユニットの渡邉剛志ユニット長は、「一言でいえば、新しい大学にふさわしいフレッシュで香り立つ奥行き深い酒」と話していた。
なお、この育種改良の研究は、発酵・醸造ユニットに所属する学生の卒業論文研究の一環として行われたという。また今回は「ししのくらの森酵母」の育種改良を優先したが、「はまなすの丘酵母」については次年度以降、改良を進めていく方針。