新型コロナの影響はどの程度? GWが書き入れ時のいちご狩り体験農園の現状
新型コロナウイルス感染症に伴う外出の自粛は、多くのサービス産業に打撃を与えた。例年、ゴールデンウィークを中心に、多くのいちご狩りを楽しもうという観光客などで賑わう観光農園も打撃を受けたことだろう。「新潟の園芸作物を多くの人々に触れてもらう観光農園の経営は大丈夫なのか」、「観光客が食べらち購入することがなかったいちごはどうなったのか」——。
白根グレープガーデン(新潟市南区)
年間14万人(うちインバウンド観光客2,000人)もの来場者を誇る人気の「白根グループガーデン」(新潟市南区)。広大な農地に、いちご狩り(1月から6月)、ブルーベリー狩り、いちじく狩り、ぶどう狩り、なし狩りなど、有機質肥料と低農薬で栽培しているフルーツ狩りを1年中楽しめるほか、夏などにはバーベキューも楽しめる。またギフトセットや、ドライフルーツジェラード、ジャム、はちみつなどの加工品も人気だ。
特に、県内で初めて、いちごの高設栽培を始めた同園では、越後姫を始め10種類ほどのいちごを楽しめる「いちご狩り」は1月上旬から6月上旬まで楽しめ、ゴールデンウィーク中は県内外から訪れる多くの観光客で賑わう。だが、最近は事情が違ったようだ。「昨年12月に新潟—台湾便が運休となり、そこに新型コロナウイルス感染症の影響が重なった。3月は例年に比べ、2〜3割減、4月に入ってからはお客様がゼロという日もあり、7割ほど減りました」と笠原節夫代表取締役は話す。
さらに新潟県が出した休業の協力要請の対象業種ではなかったが、「県外からのお客様も感染者を出すリスクがあった」(同)ことから4月25日から5月15日まで休業した。当然、いちごは余ることになり、マイナス50度で急騰冷凍し、保存することになったという。
だが、ある日、「フェイスブックで販売すれば、100件以上注文がくる」と知り合いから教えてもらった。4月下旬、フェイスブック上で定価の半額でいちご詰セットを販売してみたところ、「一気に300件の注文が入りました」と笠原代表取締役は振り返る。その後もフェイしブックで販売し100件以上が売れた。また家族も知り合いに片っ端から声をかけ販売し、相当数のいちご詰セットが売れ、イチゴを無駄にせずに済んだ。
一方、現在は、東京営業所に「3,000名の予約が入っている」(同)という。だが、夏までに開催される予定だったイベントの中止決定が相次いでいて、例年、同園を訪れる保育園、高齢者施設、町内会のツアー客がまだ戻っていない状態。「お盆後の回復に期待したい」(同)と話していた。
タカギ農場(新潟市北区)
新潟市北区で、米、トマト、加工品など生産のほかに、越後姫のいちご摘み取り体験、農家レストラン「エストルト」、直売所「サグラ」を展開する「タカギ農場(農業生産法人 有限会社高儀農場)」も多くの観光客などで賑わうことで知られている。だが今年は、いちご狩りを提供する2月から5月は新型コロナの影響を受けたという。観光客の大幅減少に加え、例年訪れる高齢者介護施設などの団体ツアーが中止。さらに、本来一番の書き入れ時である4月29日から5月6日まで自主休業した。「(いちご狩りの時期は)例年8000人の方に訪れていただいていますが、今年は1,000人以下にとどまる見込みです(※5月下旬現在)」。髙橋泰道取締役副社長はこう話す。
余剰となった、いちごは自前の直売所やスーパーなどで安価に販売したという(この結果、直売所の売れ行きは好調だったという)。
一方、今後については、「(県や市が行う)宿泊割引クーポン事業で旅行の需要が回復していくことが期待されることから、「旅行会社と連携を強化し、宿泊クーポンを使えるツアーに組み込んでもらえるようにしていきたい」(高橋副社長)と語っていた。
そら野テラス(新潟市西蒲区)
新潟市西蒲区にある「そら野テラス(有限会社ワイエスアグリプラント)」の人気のスポットだ。米、大豆、とうもろこし、ブルーベリー、イチジク、加工品などの生産のほかに、直売所「そら野マルシェ」「そら野デリカ」、農家レストラン「農園のカフェ厨房 TONERIKO」、越後姫のいちご狩りや田植え・稲刈り体験ができる「そら野ファーム」を展開する。
このうち越後姫は10棟のハウスで栽培していて、3月上旬から5月末まで、完全予約制で、いちご狩り体験を受け入れている。例年3,000人ほどの来場者があるが、今年は、県外からの来場者も多いことから感染リスクを考慮し、4月の緊急事態宣言が出たのを機に休園した。「入っていた予約もキャンセルさせていただきました」と、そら野テラス販売部部長の藤田友和氏は語る。
ただ、いちごはもともと直売所での販売が圧倒的に多かったことや、インバウンドも含めて観光客の誘客に力を入れておらず周辺地域からの来店が多かったことなどから、閉園の影響は大きくなかったという。
一方、レストランは緊急事態宣言の後、全館で特定警戒都道府県からきた人に来店自粛を依頼したこともあり4割落ちた。だが、全体でみると、もともと業務向け(外食、給食など)の販売もしておらずBtoCに特化していたことに加え、直売所も好調で、新型コロナ自粛の影響はそれほど多く受けなくて済んだという。