新潟県上越市出身の児童文学作家、小川未明が今年で生誕140周年に

生誕の地の石碑

新潟県上越市出身の児童文学作家、小川未明が今年で生誕140周年となる。50年以上にわたる文学活動の中で、童話約1200編、小説約650編を執筆し、日本のアンデルセンとも称される小川未明。

小川未明は明治15年4月7日に上越市高田に生まれた。2日、生誕140周年を記念し、上越市の町家交流館・高田小町で小川未明研究会代表の小埜裕二上越教育大学教授による講演会が開かれた。

小川未明は高田中学(現高田高校)に入学する。同級生には、早稲田大学校歌「都の西北」を作詞した新潟県糸魚川市出身の詩人、相馬御風がいた。小川未明は18歳で上京し、早稲田大学の英文科に学ぶ。そこで、恩師となる文学部教授だった坪内逍遥に出会う。

小埜教授は「未明は、ロシアのアナキズム指導者クロポトキンから多大な影響を受け、相互扶助の社会の実現、愛と正義と自由に満ちた社会の実現を願った。それは、故郷高田を自然豊かで義の心を持った町に戻したいという思いに繋がっていた」と話した。

また、小埜教授は「未明が大正15年に童話作家宣言をした背景には、厳しさを増した社会主義思想への弾圧の中で、社会運動から離れ、童話世界に逃げ込んだのではないかと推測されることがある。しかし、未明は、社会変革はクロポトキンの言う相互扶助の精神の導入という人間形成の面からこそ実現しうると考えた。人の生死・幸不幸は宿命ではないという自覚、弱きものの文学をなす覚悟が未明の思想の核心にある。社会を変えるのは人間であり、相互扶助の心を持った人間を育てることが明るい未来を気づくことだと未明は信じた」と語った。

なお、上越市幸町には、生誕の地の石碑もあるほか、上越市の市立高田図書館内には小川未明文学館が設置されており、文学館には小川未明の著作集のほか、一角には後年住居を構えていた東京都高円寺自宅の居間(書斎)が再現されている。

上越市は没後30周年を記念して、小川未明文学賞委員会ともに平成3年から小川未明文学賞を全国公募している。長編部門と、短編部門があり、大賞受賞者には賞金100万円と記念品の「小川未明童話全集」(大空社)が授与される。また、大賞作品は学研プラスより書籍化される。

平成31年の第27回小川未明文学賞で、大賞に次ぐ優秀賞を上越市内で初めて受賞した高田文化協会副会長の河村一美さん(上越市在住)は令和2年に盲人芸能者、高田瞽女(ごぜ)を題材にした受賞作「昔、瞽女さんが雁木の町を歩いていたんだよ」を自費出版した。

河村さんは「3年前、小川未明文学賞の優秀賞をいただいた感動が鮮やかによみがえった。日本のアンデルセンと称せられる小川未明だが、決して平坦な道を歩んだわけではなく、貧困に苛まれお子さん2人を亡くされている。それだけに、助け合う精神、相互扶助という心を持ち続けた童話作家といえるだろう。未明童話は分かりにくい、暗いと言われがちだが、今、混沌とした世の中にこそ、読んでほしい童話ではないでしょうか」と話していた。

案内板

小川未明文学館

河村一美さんが自費出版した本

小川未明研究会代表の小埜裕二上越教育大学教授

(文・梅川康輝)

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