新潟の園芸振興を研究面から支える「新潟県農業総合研究所 園芸研究センター」
新潟県は昨年7月、「新潟県園芸振興基本戦略」を取りまとめ、令和6年度までに現在県内に51ある「販売額1億円以上の産地」を101に増やすことや、園芸の栽培面積1000ヘクタール増を目指す目標を打ち出した。その目標達成に向けて、新潟県聖籠町にある「新潟県農業総合研究所 園芸研究センター」に注目が集まっている。
園芸研究センターは、「基盤研究部」(長岡市)、「アグリ・フーズバイオ研究部」(長岡市)、「作物研究センター」(長岡市)、「畜産研究センター」(三条市)、「食品研究センター」(加茂市)、「高冷地農業技術センター」(津南町)、「中山間地農業技術センター」(長岡市=旧川口町)、「佐渡農業技術センター」(佐渡市)を有する新潟県農業総合研究所(長岡市)の機関。
聖籠町真野にある本場の面積は、執務や実験等を行う「本館」と、品種の育種・改良、原種の採種・増殖、栽培管理技術の研究などを行うための「ほ場」を含めて12ヘクタール。また、本場からおよそ3キロメートル離れた場所に、すいか、だいこん、たまねぎ、長ねぎなど砂丘畑に適した作物の栽培技術などの研究を行う「砂丘地ほ場」(2.1ヘクタール)がある。
ここに宮島利功センター長以下、約30名の職員が働いていて、園芸に関するさまざまな研究を行なっている。このうちいくつかを紹介する。
育種(新潟オリジナル園芸品種の開発)
【えだまめ(茶豆)】
育種(新潟オリジナル園芸品種の開発)では、新潟の園芸品目の中でも今後の拡大に向けて牽引役となることが期待される「茶豆」の新品種「新潟系14号」を開発した。
7月中旬から市場に出せる早生の茶豆で、生産者はこの品種を栽培することで、7月下旬から市場に出るこれまでに茶豆と合わせ、販売のチャンスを拡大することができるようになる。
【日本なし】
新潟でなしといえば、西洋なし「ル レクチエ」を思い浮かぶ人が多いと思うが、日本なしでも新品種を開発した。
人工授粉作業が不要のため栽培に費やす労力を省力化できるほか、味も甘くて美味しいという「新美月」「新王」の2品種。
【チューリップ】
新潟県の花に指定されていて、全国一の切り花生産量を誇る「チューリップ」ではこれまでに16品種のチューリップを開発してきたが、直近では、赤色チューリップ「新紅」を開発した。現在よく見かける赤いチューリップは「イルデフランス」というオランダの品種が主流だが、近年球根が劣化し作りづらくなってきたことから、それに変わる品種として期待されている。
【アザレア】
大輪八重咲きの豪華な花を咲かせるアザレアの開花は春(4~5月頃)や冬(11月頃から2月頃)だが、園芸研究センターが開発した新品種のアザレア「スノーシャイン」は、8月中旬に低温処理を開始すると秋に開花させることができる白地に赤絞りの大輪品種。
アザレアの出荷シーズンを拡大でき、園芸の振興につながることが期待されている。
なお現在、新潟市秋葉区を中心とした産地で苗の増殖に取り組んでいる。
なお現在、園芸研究センターのほ場で、いちごの育種の研究なども進めている。
果樹作業用機械の自動化・ロボット化など
システム化しやすい新樹形(作業がしやすいよう単純な形にした樹形)の開発と、自動収穫ロボット(事前の画像をもとにAIとカメラで収穫可能なものを自動判別し収穫)などの開発を全国各地の研究機関と進めている。新潟県では、西洋なしで取り組んでいる。
収穫ロボットは、機械の価格を引き下げるため、複数の樹種で共通使用できるというロボット。台風襲来を目前にして緊急的に夜間でも収穫できる。また、草刈機を牽引する自動走行車の開発も進めている。
研究期間は平成28年から今年まで。
西洋なし「ル レクチエ」の病気の解明
新潟県の特産品である「ル レクチエ」。だが最近、褐色斑点病により、収穫量が皆無となってしまった園地も発生した。こうしたなか、園芸研究センターでは平成28年から30年まで研究を進め、病気の伝染源が落ち葉であることを解明した。この研究成果をもとに各産地で防止対策に取り組んだ結果、昨年度は出荷量を病気発生前まで回復させた。
なお上記以外にも、育種開発、栽培管理技術、水田への園芸導入のための技術開発などさまざまな研究を行なっている。具体的な研究成果については新潟県農業総合研究所や園芸研究センターのホームページ(下記のURL)で見ることができる。