新潟IPC財団がDX(デジタルトランスフォーメーション)を軸にビジネス創出や事業の多角化を支援
新潟市の外郭団体、公益財団法人新潟市産業振興財団(新潟IPC財団)は8日から、中小企業向け新型コロナウイルス緊急対策事業を展開しているが、現時点で10数件の相談申し込みがあった。データとデジタル技術を活用して、製品やサービスなどを変革するDX(デジタルトランスフォーメーション)をキーワードにビジネス創出や事業の多角化への支援を行うほか、同財団を管轄する市の経済部成長産業支援課では、好事例があれば実証実験も検討していく方針としている。
市では、8日から新型コロナウイルスの影響によるテレワークや社内のデジタル化を推進するため、同事業をスタート。予算額は450万円で、1件3万円で最大5回まで利用できるため、上限は30件を見込んでいる。同事業はデジタルに精通している中小企業診断士や、ITコーディネーター、システム技術者を無料で相談先企業に派遣し、助言を行うというもの。その後、システム運用や開発という段階になれば、「新たに市内で仕事が発生し、活性化につながる」(新潟市経済部成長産業支援課の宮崎博人課長)という。
DXとは、企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに製品やサービス、ビジネスモデルを変革すること。さらに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立することで、海外では進んでいる。宮崎課長によると、一例を挙げれば、米国のアマゾン・ドットコムなどが挙げられるという。経済産業省でもDX化が遅れているとして、2025年までに既存システムを刷新し、DXを実現することにより、2030年に実質GDP130兆円超の上昇を実現したいとしている。
一方、現在までの相談内容は、テレワークに関しては市内民間企業が相談を行っていることもあり件数は少ない一方、アフターコロナで増えているデジタル技術の営業への活用に関する相談が多いという。
具体的には、市内の金属部品加工業会社からは遠隔地の取引先の訪問が難しく、デジタル化の導入で遠隔確認システムなどを開発できないかとの相談があったほか、設備工事業会社からは新型コロナウイルスの影響により社内のデジタル化を進める一方、設備工事の施工管理システムを外販できないかといった相談も寄せられたという。また、金属部品製造会社では既存のホームページを刷新して受動型ではなく営業活動に活用し、BtoB(企業間取引)だけでなくBtoC(消費者との取引)も行いたいという相談もあった。
同財団は実証実験の支援にも注力しており、昨年は観光タクシーの相乗りやAIによる好みの日本酒を判定するシステムの実験を行った。宮崎課長は「30件の中でよいものがあれば、実証実験をすることを検討したい」と話している。