新潟県上越市大潟区の鵜ノ池のハスは「不忍池斑蓮」と判明
新潟県都市緑花センターは、上越市大潟区にある県立大潟水と森公園に接する「鵜ノ池」に自生するハスは、従来食用に植えられたものではないかと考えられていたが、調査により、鑑賞用品種の「不忍池斑蓮(しのばずいけまだらはす)」であることが判明したと発表した。
上越市大潟区の県立大潟水と森公園に隣接する「鵜ノ池」には今年もハスが咲き始めている。池のハスの特徴は大型で白花、花弁のふちに紅紫色の斑が入っていることが特徴であり、従来は、食用に植えられたハスではないか、と言われていた。
しかし昨年、新潟県立植物園の倉重園長より「大潟のハスはどうも普通のハスとは違うのではないか」との指摘があり、園長経由でハスに詳しい京都府立植物園の山本氏に同定を依頼した結果、「不忍池斑蓮」という観賞用の品種のハスであることが判明した。
品種の名称にもなっている東京都台東区上野の不忍池は三つに分かれており、その内の一つが「鵜池」と呼ばれており、奇しくも大潟の鵜ノ池と同じ呼称である。また、大潟の鵜ノ池は寛永年間(1624年〜1645年)に築堤されたと記録されているが、その後、誰がどのようにしてこのハスを植えたのか、その経緯は分かっていない。
ハスの開花時期は7月中旬から9月中旬頃まで。鵜ノ池のハスは、丸山古墳へ至る「歴史ゾーン」散策路などから鑑賞することができる。
新潟県立植物園の倉重園長は報道資料のなかで以下のコメントを発表している。
不忍池は上野恩賜公園(東京都台東区)の中に位置する天然の池で、1600年代後半にはハスが生えており、明治時代まで東京を代表するハスの名所として知られていました。この頃にどのような品種が栽培されていたかは不明ですが、「本草図譜」(岩崎灌園 1828年)には「不忍池斑蓮」の名があげられていることから、江戸時代末期には不忍池には本品種が存在していたと思われます。
また、昭和10年の植物学者である大賀一郎博士(2000年前の地層から古代ハス(大賀ハス)の種子を発見、開花に成功)の不忍池の調査では、不忍池斑蓮を含む10品種が記録されました。その後、戦後の食糧難で不忍池は田んぼとして使われ、その時代に一度ハスはなくなったとされていますが、愛好家によって栽培されていた不忍池斑蓮などの4品種が現存します。
京都府立植物園の山本氏によれば、「不忍池斑」は、愛好家であれば普通に入手できるが、容器栽培では花上がりが悪いため、栽培している人はそれほど多くないとのことでした。また、斑蓮系統にはさまざまな系統があり、外見上から斑が多いタイプと少ないタイプの大きく2つに分類されるが、DNA解析の結果から、すべての斑蓮品種は同一であることが明らかとなっていることもご教示いただきました。
上野公園の管理事務所に確認したところ、不忍池の鵜池は戦後にできたが、名称等についての詳細は分からないとのことでした。