他分野への応用で対応するニイガタスカイプロジェクト
新潟市の航空機関連産業の育成を推進する「NIIGATA SKY PROJECT(ニイガタスカイプロジェクト)」は航空機部品受注が新型コロナウイルスの影響を受けながらも、別の分野に応用して部品を受注するなど対応策を図っている。担当する新潟市経済部成長産業支援課の宮崎博人課長は経済部の在籍が長い。「今から10数年前の当時、市では尖がったものをやりたいと思い、取り組んだのがこれ」と話す。同プロジェクトの現状と今後の展開を追った。
同プロジェクトの発端は横浜市にある株式会社山之内製作所が当時新型の航空機エンジン部品の受注をきっかけに航空部品に特化した仕事を先代の出身地である新潟県でやりたいということになり、2007年に新潟市西蒲区に進出したことから始まる。つまり、当時の市長が推進したわけでもなく、あくまで同社と十数年前の当時、企業誘致担当だった宮崎さんとのつながりから生まれたというわけだ。その後、同市では同プロジェクトを掲げ、現在50社が加盟している。
まず、全体的な航空機産業の取り巻く環境について見てみると、新型コロナウイルスの影響で下振れリスクがあるが、世界で現在約2万機の旅客機が上空を飛んでおり、燃費向上などを目的とした新しい飛行機への入れ替え需要が約1万6,000機、格安航空機などで中国やアジア人の利用などによる新規需要が約1万7,000機見込まれる。コロナの直前までは20年後には需要は2倍になると言われていた産業である。
このような成長産業にありながら、日本で生産されている航空機の部品はアメリカの10分の1程度であるほか、世界の航空機メーカーはボーイング(アメリカ)とエアバス(フランス)の2社で独占状態。エンジンメーカーもGE(アメリカ)、プラット・アンド・ホイットニー(同)、ロール・スロイス(イギリス)、の3社が独占している。実際のところ、日本の国内メーカーは下請けとして存在しており、機体部分は三菱重工や川崎重工などで、エンジンも前述の2社やIHIとなっている。
新潟市はそこに食い込めないかと、これまでの業界の慣例だったギザギザ型と呼ばれ発注方式から、一貫生産受注ができるように共同工場などを整備した。ギザギザ発注とは例えば、発注業者から依頼されたプレス業者はプレスが終わったら、一旦発注
業者に戻し、また、発注業者から次の熱処理業者へ渡される。同じように次はめっき業者、組み立て業者という流れになる。「これは防衛部品を作る場合に情報が洩れないようにするためから始まったものと言われているが、このやり方ではコストがかかってしまう」と宮崎課長は話す。
そこで、新潟市はエンジン部品の専門工場として、同市西蒲区に株式会社山之内製作所などで構成するJASPA共同工場を、同市南区に新潟メタリコン工業株式会社(新潟市東区)、佐渡精密株式会社(佐渡市)、株式会社柿崎機械(上越市)で構成するアルミ機体部品や装備品部品の戦略的複合工場を整備。前者は中小企業では国内有数のエンジン部品加工実績があり、後者は航空機体部品を作っており、国際認証を必要とする化学表面処理施設を有している。これにより、低コスト体制による生産性の向上が期待できるようになった。
また、双日グループの双日エアロスペース株式会社(東京)、商社の敦井産業株式会社(新潟市)、株式会社日本政策投資銀行(東京)が出資者となり、資本金6,000万円の株式会社新潟エアロスペース(新潟市中央区)を設立、2019年から本格的に事業をスタートし、海外市場への売り込みも展開できるようになった。
宮崎課長は「現在は航空機需要が下方修正されたものの、今後は医療用部品や半導体部品、エネルギー関連のLNGガスタービンなどに航空機部品の技術を応用できる分野の需要の取り込みを図っていく」と話している。