コジマタケヒロのアルビ日記2022 Vol.5 小島亨介 「クレイジーなポジション」
高校時代、僕はサッカー部でした。そんな僕がゴールキーパーというポジションを選んだのは、実に魅力的で刺激的だったから。唯一、手を使える。唯一、ユニフォームが違う……。ピンチを防げばヒーローだが、決められてしまえば戦犯扱い。
そんなスリリングだが、実に魅力的なポジションに惹かれたからでした。
「2年間、チームに対して貢献できなかったという、すごく悔しい思いがありました。自分の力をしっかりとチームに還元したい。しっかり貢献したいという気持ちを強く思っていました。だから、チームから完全移籍のオファーをいただいたときは即決でしたね」
度重なるけがにより、戦線を離脱するも、今季は開幕からスタメンで出場。第10節終了時点で、9失点。チームの最後尾を守るのが、ゴールキーパー・小島亨介選手。
「間違いなく日々の積み重ねだと思います。トレーニングを高い強度で継続できていること、筋トレも含めたそれらの積み重ねがコンディションを上げることに重要だと今季は特に実感しています。これが好調の要因ですね」
第10節・栃木戦(A△/1−1)の28分、35分、52分、82分。
第8節・熊本戦(A○/2−1)の17分、31分、56分、82分。
これら試合のこれら時間、僕の試合取材ノートには「ナイスキー!」「ビックセーブ!!」という言葉が書き記されている。もちろん、これ以外の試合でも数多く。
「リキさん(松橋力蔵監督)から、『アシスト目指すつもりでやってくれ』とキャンプ時に言われました。キーパーでも攻撃になれば、フィールドプレーヤーと一緒だというメッセージとして、自分は受け取りました。同時に、もっと思いっきり、クレイジーにならないといけないという気持ちになりましたね。自分が成長して、もっともっと力を出していきたいと、リキさんの言葉を聞いてあらためて強く思いました。リハビリ期間に重点的にしていた、体の上半身と下半身をつなげるような動き。この土台に、いま日々やっている筋トレが積み重なり、いい方向に向かっていると思います。昨年まではけがのことがあって、自分の持っている力をなかなか出せていなくて、練習での積み重ねができていませんでした。けがの状態がよくなった今季、高い強度で練習やトレーニングをやり続けられていることがキレやコンディションが上がっている要因だと思います」
20年は土台つくり。術後ということもあり筋量を増やす筋トレメニューはあまりしなかった。
21年、2度の手術があり、リハビリに時間を割くことが多かった。
22年、けがが癒え、やっと思うような筋トレに臨めるようになった。安野努フィジカルコーチ指導のもと、跳躍力や瞬発力をあげるトレーニング。キックフォーム改善などのアドバイスも受けながら、日々の練習に取り組んでいるという。
「僕から相手の背後に抜けた(谷口)海斗くんに一発でパスが通って、海斗くんが決めるというのが、一番早くて一番効率的。と同時に一番難しいプレーです。でも、この難しいことを成し遂げたいと思っていますし、チャンスを逃さないようにしようと常に狙っています。一発で通るようなキックの飛距離があれば、相手のディフェンスラインだってめちゃくちゃ下がらなくちゃいけない。そうなると、相手のセンターバックとボランチの間にスペースができて……と、選択肢がどんどん増えると思います。少しでもキックしたボールの飛距離を伸ばして、キーパーとして究極の攻めの形をぜひ実現したいですね」
『ゴールを守る』に加えて、『相手の裏をつく』。小島亨介選手は、そんな2つのスリリングを高次元で楽しもうとしている。
現代のゴールキーパーは、昔に比べてよりクレイジーなポジションらしい。キーパーのアシストかぁ。確かに楽しそうだ。
◎アルビライター コジマタケヒロ
練習、ホーム戦を中心に日々取材を続ける、アルビレックス新潟の番記者。また、タウン情報誌の編集長を務めていた際に、新潟県内の全日本酒蔵をひとりで取材。4冊の日本酒本を出した、にいがた日本酒伝道師という一面も。(JSA認定)サケ・エキスパート