【特集】新潟県内の上場企業 コロナ禍で業績に明暗①「食品・小売メーカーは巣ごもり需要で好調か」

コロナ禍で県内の上場企業の業績にも明暗が別れた

新潟県内の2021年第1四半期の決算がほぼ出そろった。巣ごもり効果で好調だった食品や小売は好調だった一方、製造業は中国からの資材調達などに支障が出て軒並み減収減益を余儀なくされた。3回に分けて県内上場企業の最新決算の状況を業界別に紹介する。

 

【食品業界】内食需要で好調だが、土産関連は苦戦

亀田製菓株式会社(新潟市江南区)の2021年3月期第1四半期決算(連結)は売上高248億3,700万円(対前期同期比5.7%増)、営業利益8億9,300万円(同110.6%増)、経常利益10億5,200万円(同81.8%増)、親会社株主に帰属する純利益は6億8,600万円(同122.0%増)。

巣ごもり需要による増収効果があったが、外出自粛により百貨店や土産物を扱う子会社の販売が低迷した結果、国内米菓事業が減益となった。一方、海外事業の増益と、食品事業の増益効果で、本業のもうけを示す営業利益は約2.1倍となった。

株式会社ブルボン(柏崎市)も好調だった。の2021年3月第1四半期決算(連結)も増収増益だった。売上高は278億7,800万円(対前期比0.4%増)、営業利益は9億2,600万円(同93.8%増)、経常利益は9億3,900万円(同95.6%増)、親会社株主に帰属する純利益は5億9,000万円(同85.5%増)。

ファミリーサイズの商品群や袋チョコレート商品が好評で、ビスケット品目をはじめとした各品目のロングセラー商品が堅調に推移したことから菓子全体では前年同期を上回った。

ただ、外出自粛が影響し土産物品の需要は伸び悩んだ。また、飲料・食品・冷菓その他の中では保存缶商品が需要の高まりを見せ前年同期を上回った一方で、「ルマンドアイス」に代表される「お菓子アイス」は競争激化により前年同期を下回った。さらに、自動販売機事業と酒類販売事業は外出自粛の影響により自動販売機の利用機会や土産用受託商品の需要減少などにより前年同期を下回った。

この他にも、岩塚製菓株式会社(長岡市)も主力商品の集中生産や製造・販売コストの削減により増収増益となった。(8月9日現在、2021年第一四半期の決算はまだ発表されていない)

一正蒲鉾株式会社(新潟市東区)も2020年6月期決算(連結)売上高は対前期比1.3%増の360億4,700万円と伸びた。

主力商品群の「カニかま」は魚肉たんぱくが手軽に摂れる食材としてメディアに取り上げられ、健康志向が続くなかで販売が伸長。年末のおせち商品は、純国産原料を100%使用した「純」シリーズや甘さを抑えた伊達巻などが好調に推移した。また、おでん商材は、昨年の秋・冬シーズンにおいて、例年と比べて全国的に気温が高めであったため「揚物」は軟調に推移したが、外出自粛により、内食需要が増加したことから調理の簡単な「レトルトおでん」が堅調な売れ行きとなった。

ただ営業利益18億8,800万円(同44.4%増)、経常利益18億6,700万円(同48.8%増)も伸びたものの、親会社株主に帰属する純利益は2億5,200万円(同△62.4%減)となった。減少した理由は、連結子会社である一正農業科技(常州)有限公司が保有する資産について、新型コロナウイルスの影響で中国国内の不動産市況や設備投資動向が不透明な状況であるため「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき資産性を評価した結果、資産の減損処理を行い、減損損失10億1,200万円を計上したことなどによるものという。

また、サトウ食品株式会社(新潟市東区)は新型コロナウイルスによる内職需要の高まりで包装米飯製品、包装餅製品共に売り上げは堅調に推移し売上高は前年度を上回った。ただ、前年から続く物流費の上昇や販売増に伴う販売促進費の増加により営業利益、経常利益、親会社に帰属する当期純利益は前年同期を下回った。

新型コロナウイルスの影響による学校給食関連や土産関連の売上高が減少し減収減益を余儀なくされた企業もある。

株式会社セイヒョー(新潟市北区)の2021年2月期第1四半期決算(非連結)は売上高8億4,200万円(対前期同期比19.9%減)、営業利益△1,900万円(前年同期は△2,300万円)、経常利益△1,600万円(前年同期は△1,300万円)、親会社株主に帰属する純利益は△1,300万円(前年同期は△1,300万円)となった。

新型コロナウイルスによる全国一斉休校、商業施設の休業などの影響により、学校給食関連の売り上げが減少し、外出自粛や移動規制に伴い新潟銘菓笹だんごを中心とする和菓子販売が低調に推移した結果によるものだという。

写真上はサトウ食品本社、写真下は一正蒲鉾本社

社名 売上高 経常利益 通期売上高予想
岩塚製菓(2020年3月期連結) 228億4,000万円(△0.6) 25億5,300万円(35.5%) 232億円(1.6%)※2021年3月期
サトウ食品(2020年4月期連結) 448億8,800万円(9.8%) 11億3,000万円(△16.0%)
一正蒲鉾(2020年6月期連結) 360億4,700万円(1.3%) 18億6,700万円(48.8%) 370億円(2.6%)※2021年6月期
セイヒョー(2021年2月期 第1四半期非連結) 8億4,200万円(△19.9) △1,600万円 38億円(1.7%)
亀田製菓(2021年3月期 第1四半期連結) 248億3,700万円(5.7%) 10億5,200万円(81.8%) 1,060億円(2.1%)
ブルボン(2021年3月期 第1四半期連結) 278億7,800万円(0.4%) 9億3,900万円(95.6%) 1,186億円(0.9%)
(カッコ内は対前年同期比)

 

【小売業界】巣ごもり需要で過去最高の実績の企業も

小売関連企業も巣ごもり効果が現れたようだ。

アクシアル リテイリング株式会社(長岡市)の2021年3月期第1四半期決算(連結)は、売上高は647億1,200万円(対前年同期比12.3%増)、営業利益40億3,400万円(同76.4%増)、経常利益40億9,900万円(同75.5%)、親会社株主に帰属する純利益28億円(同78.6%増)と、第1四半期連結累計期間としては過去最高の実績となった。

特にスーパーマーケット事業の経営成績は、売上高が645億9,400万円(対前年同期比12.4%増)、営業利益は39億3,100万円(同82.2%増)となった。これには外出自粛による来店回数の減少があった一方で、来店時にまとめ買いを行う傾向や、外食ではなく内食にで済ます傾向が増え、また外食を控える分、代わりとなる需要が生じ食品全般について一品単価を押し上げたことなどが理由に挙げられる。

アークランドサカモト株式会社(三条市)も2021年2月期第1四半期決算(連結)の売上高は323億2,600万円で、前年同四半期比15.4%増と好調。営業利益は39億5,200万円(同37.7%増)、経常利益41億8,700万円(同36.3%)、親会社株主に帰属する純利益は23億2,200万円(同48.8%増)で増収増益となった。

ホームセンター部門の売上高は、188億7,700万円(前年同期比20.5%増)となった。新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止需要や緊急事態宣言に伴う外出自粛による巣ごもり消費の拡大により、既存店売上高が前年同期比15.8%増となったことや、前期7月のニコペット京都八幡店、8月のホームセンタームサシ久喜菖蒲店・ニコペット久喜菖蒲店のオープンが寄与した。その他小売部門の売上高も巣ごもり消費の拡大が影響し、19億6,000万円(同14.5%増)となり、その結果、小売事業は、売上高208億3,700万円(同19.9%増)、営業利益22億1,800万円(同92.9%増)となった。

株式会社コメリ(新潟市南区)も同様に、2021年3月期第1四半期決算(連結)は、売上高1,1181億500万円(前年同四半期比15.8%増)、営業利益124億1,100万円(同74.3%増)、経常利益124億1,400万円(同73.1%)、親会社株主に帰属する純利益85億1,200万円(同76.0%増)の増収増益となっている。

外出自粛によって巣ごもり需要が高まり、ウッドデッキやレンガなど庭づくりに使用するガーデン資材や野菜苗、小袋肥料などの家庭菜園関連の商品が好調だったことに加えて、木材、塗料などのDIYに関連する商品も好調だった。また、自社開発商品の売り上げが好調に推移したことに伴い売上総利益は大きく伸長した。一方で、リフォーム工事などの受注高は、前年の消費税増税の反動減を受け低調に推移した。

インターネット販売も好調だった。ネットで注文し店舗で受け取る「取り置きサービス」が感染予防の観点から需要が高まったのである。さらに販売費及び一般管理費は、紙面主体の広告媒体からデジタル化への転換を進めたことや、チラシ広告自体を自粛したことなどから広告宣伝費を中心に減少した。

その他に、株式会社オーシャンシステム(三条市)も2020年3月期決算(連結)だが、内食需要な高まりなどにより増収増益となった(8月9日現在、2021年3月期第1四半期の決算はまだ発表されていない)。

巣ごもり需要で大幅な増収増益を受ける一方で、扱う商品や時短営業、休業の実施で大きく影響を受けた企業もあった。

株式会社トップカルチャー(新潟市西区)は2020年10月期第2四半期決算(連結)は、巣篭もり需要や除菌、衛生用品などの販売から、主力である書籍や雑貨、文具の売り上げが伸び営業利益は前年同期に比べ上回ったものの、営業店舗数そのものが去年より減少し、グループの主軸である蔦屋書店の売上高は前年同期比で5.4%減少した。

また、株式会社ハードオフコーポレーション(新発田市)は多数の店舗で営業時間の短縮や休業を行い、さらに利益率の高い衣料品が特に不振だったことも重なり、2021年3月期第1四半期決算(連結)は、売上高47億1,600万円(対前期同期比4.4%減)、営業利益8,700万円(同△67.7%)、経常利益1億2,700万円(同△62.4%)、親会社株主に帰属する純利益は6,700万円(同△76.0%)となった。

左上写真は原信、左下写真はコメリ、右上はブックオフ、右中央は蔦屋書店、右下はチャレンジャー

社名 売上高 経常利益 通期売上高予想
オーシャンシステム(2020年3月期連結) 619億9,900万円(8.1) 13億8,500万円(26.0%) 652億1,000万円(5.2%)※2021年3月期
トップカルチー(2020年10月期第2四半期連結) 159億6,400万円(△5.4%) 3億7,600万円(28.8%) 287億円(△8.0%)
コメリ(2021年3月期第1四半期連結) 1,118億500万円(15.8%) 124億1,400万円(73.1%) 3,530億円(1.3%)
アークランドサカモト(2021年2月期第1四半期連結) 323億2,600万円(15.4) 41億8,700万円(36.3%) 1,150億円(2.1%)
アクシアル リテイリング(2021年3月期 第1四半期連結) 647億1,200万円(12.3%) 40億9,900万円(75,5%) 2,420億円(0.5%)
ハードオフコーポレーション(2021年3月期 第1四半期連結) 47億1,600万円(△4.4%) 1億2,700万円(△62.4%)
(カッコ内は対前年同期比)

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